妹は最初に山本さんを迎え入れていたグループの一人に、なにかあったの、と尋ねると、
「なんだかよくわからないけど、あの子、気味が悪くて……」
と、歯切れ悪くこう言いました。
他のグループに聞いても同じでした。
特段、あの子に問題があるわけではなく、
一緒にいると、なんだか落ち着かなくて不安になる、怖くなる、と言うのです。
やっぱり、憑いている何かのせいか、と妹は胸の内で確信しました。
それから数日後、また山本さんはグループから外れてひとりになっていました。
妹のグループは比較的穏やかな子が多いため、
「山本さん、可哀想だよ、仲良くしてあげようよ」と、いう話になりました。
妹は内心憂鬱でしたが、あの子何かに取り憑かれてるからヤバいよ、とは言えません。
その日、山本さんを誘ってお昼を一緒に食べたのですが、とてもおとなしい子でした。
転校早々、あちこちタライ回しにされて、不安なのでしょう。
話しかけられたことだけに答え、あとは黙って頷いて、話を聞いているだけです。
(なんかヘンだな……)
数日前から妹は違和感を覚えていました。
いつも人ならざるものと対峙した時、肌の表面がぴりぴりする感覚に襲われるのですが、今回はそれがありません。
相変わらず、彼女の姿は二重にブレたように見えているというのに……。
(見えているアレは、霊的なものじゃないの?)
妹が疑問に感じ始めた時、グループの中で、すこし感情の起伏の激しい子が、
「山本さん、おとなし過ぎだねえ、もうちょっと話してよー」
やんわりと批判めいたことを言った時です。
いままで彼女と同じ動きをしていた人影が不意に、その発言した子を平手打ちするような動きをしたのです。
平手打ちをされた子は、んっ? と怪訝な顔をして、周囲を見回しました。
「どうかした?」
「ううん、なんか、急に風が吹いてきたような感覚があってさ……」
頬の辺りを押さえながら首を傾げます。
数日、観察していると、どうやらその人影は、特定の相手にだけ攻撃動作をするようです。
山本さんに対してすこし強い物言いをする子。
おとなしい彼女に対して、マウントを取るような態度を取る子。
彼女が気の進まなさげなことに無理に誘ったりする子。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。