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ソレイルさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

すきま風の酷いアパート
短編 2023/02/18 23:53 893view

私が昔、半年だけ住んでいたアパートでの話です。

当時、私はフリーターでお金がなかったので、安いアパートを選んで入居しました。木造で古かったですが、家賃の安さを考えると充分に妥協できる住み心地でした。ただ入居した当初は12月だったので、冷たいすきま風が部屋に入ってくるのがしんどかったです。

建てつけが悪いのか、部屋の扉を閉めても扉と壁の間に1センチ近い隙間があり、廊下から常に風が入ってきますし、暖房をつけても暖かい空気が外に逃げていきます。DIYでもして隙間を塞げばいいのかとも考えましたが(軽いDIYなら可能な物件でした)、私にそんな技術はありません。寒いのは辛かったですが、「まあ冬の間だけ耐えるしかないか」と思っていました。

私が違和感を覚えたのは、それからしばらく経った2月のある日でした。立春を過ぎ、少しずつ暖かい日が増え始める頃のこと。その日は最高気温が14℃くらいあり、外はほぼ小春日和でした。

アルバイトを終えて自分の部屋に帰ってくると、私は空気が急に「ヒヤッ」としたのを感じました。

部屋の中の方が外より寒かったのです。

日当たりの悪い家や北向きの家だと、しばしばそういう事があるそうです。しかし、その時感じた「ヒヤッ」という空気の冷たさは、上手く言えませんが、何だか不自然な感じがしたのです。「すきま風でこんなふうになるものか?」と思いました。

それからまた少し経った4月のある日、私は部屋で寝そべりながら動画を観ていました。部屋の寒さは、真冬の頃よりはマシになっていたかもしれませんが、まだ大分寒いままでした。

動画は、配信者の3人組がホラースポットを突撃リポートする回でした。暗視カメラで緑色に照らされた3人が、廃墟の入り口のような所を、「うわ、暗っ」「寒気がする」などとリアクションをとりながら進んでいます。

ふと配信者の一人が、

「ここ(廃墟)に入ってから寒気がすごい」

と言いました。

「震えがとまらん、ここ本当に寒い」

配信者はブルブル震えていました。半袖を着ているし、撮影時期は夏頃のようですが、確かに寒そうでした。

「絶対なんかいるだろ、ものすごい寒気するもん」

配信者の一人が言いました。それを見て私は、「もしかして…」と思いました。

「この部屋もそうなんじゃないか?」と。

すきま風で寒いのではなく、ホラースポットのように、「何か」がいるから寒気を感じるのではないか。

「何か」って?まさか、家賃が安いことと関係が?

だんだん怖くなってきて、スマホを置いて訳もなく身体を起こし身を縮めたその時、

「フゥー……」

と、扉の方から冷たい空気が来たのを感じました。扉は閉まっていました。

思えば、薄々そんな気がしていたのです。木造アパートに住む際、最も大変なのは騒音問題だという話もありますが、私はそのアパートで「すきま風」の他は問題なく快適に過ごせていました。

今考えると、両隣の部屋から物音が聞こえてきたことはありませんでした。両隣どころか上下階からも。安くて住みやすいアパートなのに、入居者が少ないような気はしていたのです。私はこの時、「ああ、このアパート何かあるんだな」と確信しました。

そこから引越し費用を大急ぎで確保し、引越し先を見つけるまでの3週間、私は何とかその部屋に住み続けました。その部屋で何があったのか確かめたい気もしましたが、確かめてしまうと残りの期間、正気で住み続けることができなくなると思ったので、何も調べたり等はしませんでした。3週間経って、5月半ばになっても部屋は寒いままでした。

何とか別のアパートを見つけて移り住み、生活が一段落ついてから、私はようやくあの部屋について調べました。事故物件が掲載されているサイトに、ちゃんとあのアパートの名前が載っていました。

元が介護施設だったのを改装した建物で、介護施設だった頃、職員が入居者に暴行して死なせたということがあったそうです。それがどの部屋で起きた事なのか分かりませんが、自分の部屋でなかったことを祈るばかりでした。

変な話ですが、この出来事の影響で私は「肌寒い」と感じるのが怖くなってしまいました。もしかしたら「寒い」と感じる時の何回かに一回は、そこに「何かがいる」時なのかもしれないと思えるのです。

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