草むらから延びる人の足
投稿者:ソレイル (10)
これは私が子どもの頃に見た、とある「怖いモノ」の話です。
春休みなので祖父母のいる田舎に来ていた私は、昼間は毎日のように、家の周りの草むらや川のほとりで遊んでいました。
その日は一つ年上の姉と一緒に、草むらでかくれんぼをしていました。
鬼になった私は、姉を探しました。途中、草むらの中に服のようなものが見えたので、私は姉だと思って近寄りました。しかし、違ったのです。
それは人の足でした。作業着のようなものを着た、おそらく男性の足が、草むらの中に横たわっています。
そしてなんと、その足には上半身がなかったのです。
私は見間違いかと思いました。
そして、ひょっとしたら草かげに隠れているだけかと思い、その「足」の足元の方に少しだけ回り込んでみました。
しかし上半身が見える気配はなく、私は恐ろしくなって急いでその場を立ち去りました。
その日、姉と一緒に家に帰ってからも、私は昼間見た不気味なモノのことが頭から離れず、震えていました。
その様子を見かねてか、祖父が「どうかしたか」と私に訊ねました。私が昼間のことを話すと、祖父は一瞬、ハッとしたような顔をしました。
そして、このような事を語ったのです。
「数年前、草むらの向こうの森で、トンネルを作る工事をしてたんだ。
だが工事の途中、若い男の人が重機に挟まれて死んでしまったらしい。
ひどい事故だったそうだ。腰のところから身体が上下2つに分かれて、苦しみ叫びながら亡くなったという。
トンネル工事は無事に終わったが、それ以来、この辺りの草むらに、男の霊が出るようになったんだ。死んだ時と同じように横たわった姿で。
怖かったろうが、見たのが足の方だったなら、お前はまだマシだよ」
祖父いわく、男の霊は足だけのこともあれば、「上半身だけ」のこともあるのだそうです。
私はそれ以来、草むらで遊ぶのをやめました。もしまた草むらに行って、男の霊の「上半身の方」、
つまり、苦しみの表情を浮かべて死んでいる顔がついている方を見てしまったら、立ち直れなくなりそうだからです。
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