時給1300円のバイト
投稿者:ソレイル (10)
私はフリーターをしています。派遣サイトに登録して、単発で仕事を紹介してもらう形です。
ある日、私は派遣サイトで「軽作業、時給1300円、駅から送迎あり」という非常に条件のいいバイトの案件を見つけ、早速応募しました。
高時給なのでハードなのかと思っていましたが、いざ就業してみると作業内容はごく普通で、むしろ作業量が少なくて楽なくらいでした。
8時間勤務で日給は1万円以上。こんなにいい案件ならまた応募したいと、帰りの送迎タクシーの中でバイト仲間と話し合いました。
しかしその時、送迎タクシーの運転手の男性が、こんなことを言ったのです。
「実はここ、通り道が心霊スポットなんですよ」
私達はぎょっとしました。男性は続けます。
「駅を出てすぐの所に、橋があったでしょう。あそこです。
昼夜関わらず、青白い顔の女の人が欄干のところに立ってるんですよ。
その女の人と目が合うと、ちょっと大変なことになるんです。メンタルやられたみたいになったり。
だから時給高めにしてあるんですよ」
私達はまさかそんな話を聞かされるとは思っていなかったので、かなり面食らってしまいました。
私は勇気を出して男性に訊ねました。
「それ、本当の話ですか?」
「ええ」
「運転手さんは、心霊スポットを通って大丈夫なんですか」
「私は毎週お祓いに行ってます」
男性はふざけている感じではなく、淡々と「事情を説明する」ような口調でした。それがより一層、私達をぞっとさせました。
と、その時。
「あ、橋だ」
バイト仲間が前方を見ながら言いました。
私達の乗った送迎タクシーは駅の近くまで戻って来ており、その手前にある心霊スポットの橋が目前に迫っていたのです。
「あ、外見なければ大丈夫ですよ。外見ないで」
運転手の男性が私達に言いました。私とバイト仲間はとっさに顔を伏せました。
けれど少し遅かったみたいです。私の視界の端には、タクシーの窓の外がわずかに見えていました。
ずぶ濡れの、汚れて元が何色だったのか分からないワンピースのようなものを着た人間の下半身が、欄干のそばに立っているのが、はっきりと視界に入ってしまったのです。
いかにも幽霊という感じではなく、(姿は異様ではあるものの)背景に溶け込んだ普通の人間のように立っていたので、幽霊を見たという実感が湧きませんでした。
しかし、私はあれがこの世のものではなかったと確信することになります。バイトに行った翌日、私は急激に体調を崩したのです。
原因不明の頭痛と吐き気が一日中続きました。私はこんな体調の崩し方をしたことがないので、この体調不良は間違いなく、前日の出来事のせいだと分かりました。幸い不調は一日でおさまりましたが、本当に不気味でした。
運転手の男性は、女性と「目が合うと」大変なことになると言っていましたが、目を合わせてはいない私もこんなことになったので、やはりあの場所には近寄らないのが一番なのだと思いました。
これって実話ですか?ひさびさにゾクゾクした!