神隠しと妹
投稿者:take (96)
私が小学3年生の頃の話です。
私の上と下に3歳違いの姉と妹がいます。
姉はおっとりとした性格で、多少の出来事には動じません。
悪戯してもしばらく気づかなかったり、
驚かしたりしても「ああびっくりした」と、全然びっくりしていない顔で言ったりします。
そんな姉をからかいたくて、私はよく悪ふざけを仕掛けました。
ある日、姉が食べかけていたお菓子を、隙を見て私と妹が奪いました。
それは姉の大好物だったので、さすがに怒ったのか、
「こらあ、返してよ!」
と、追いかけてきました。
私と妹は1階にある和室の押し入れに隠れ、クスクスと笑いを押し殺していました。
姉の足音が近づいてきたかと思うと、勢いよく襖が開かれ、
「見つけた! 早く返して!」
と、姉が仁王立ちになっています。
「ごめんごめん、お姉ちゃん」
私は笑いながら押入れを出て、続いて妹も出てくるはずでした。
「あれ?」
妹がいつまで経っても出てきません、というより、姿が見えないのです。
布団やら客用の座布団が入っている狭い押し入れに、身を隠す場所などありません。
「ほんとに一緒に隠れたの?」
「うん、襖が開くまでは横にいたもん」
姉は半信半疑のようでしたが、私が妹の名を呼びながらあちこち探しているのを見て、
ただごとではないと気付いたのか、一緒に探し始めました。
「いないね……」
私と姉が途方に暮れていると、妹が2階から降りてきたので驚きました。
妹の話によると、私と一緒に隠れたはずなのに、襖が開いて明るくなったかと思うと、
すぐに暗くなると同時に私がいなくなったので、慌てて押入れを出ました。
すると、そこは2階の和室の押し入れだった、というのです。
妹はすぐに押入れを出たと言いますが、私と姉が彼女を探し始めて確実に5分は経っていたと思います。
1階から2階へ、そして5分のタイムラグ。
あの時、妹は瞬間移動と時間移動をしたことになるのでしょうか?
うまく帰ってこられたけど、もし帰れなかったら……。
それが神隠しというものなのかもしれません。
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