弱った植物に付く虫のよう
投稿者:YoyoYoyoY (52)
短編
2023/01/20
02:52
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久しぶりにインフルエンザに罹ってしまった私は、熱にうなされながら布団をかぶっていました。
身体の節々が痛くてたまりません。
解熱剤も数時間しか効かず、すぐに熱は上昇します。
「ああ、いつまでこんな状態なのだろう。仕事にも行けやしない」
ぼーっとする頭で、来週の仕事の段取りなど無駄に考えて時間は過ぎて行きます。
「こんな状況下では、きっと夜ロクでもないことになる」
私は心して夜を迎えました。
家族が寝静まった頃、それは玄関から入って来ました。
(ああ、対抗できるだけの力があるかどうか)
私は溜息をつきます。
部屋に入ってくる気配と同時に、キツイ金縛りです。
(うわああ~やっぱり熱のために、3秒で解くことが出来ない!)
私は動かない指先に力を込めて握り返してみました。
(無駄だよ~お前~無駄だよ~)
幽霊の声が頭に響きます。
本当に、風邪を引いて免疫が落ちたときや、高熱が出ているときに限って金縛りをかけてくる性悪な幽霊がいるのです。
「弱ってるところを狙って来るって酷くないか!」
ようやく口が開きました。
(くそう)
捨て台詞を吐いてそれは去って行きました。
元気だったら、あんな小物3秒で金縛りを解いてやるのに。
私はふと、弱った植物にアブラムシがたかってエキスを吸うのを思い出しました。
「アブラムシみたいな奴らだな」
気を取り直して、2度寝に入ります。
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