幽霊が通る家
投稿者:Zemk (1)
その中でも,最も恐怖を感じた霊のお話をさせていただきます.
私はいつものように両親の隣で寝ていました.
いつも例の足音がする部屋では,次男がひとり床にそのまま眠っていた状態でした.
すると,階段から誰かが上ってくる音が聞こえてきました.
私はその階段の音で目が覚めたのですが,その日の足音はいつもより重く力強い音がしていたのです.
私は,長男が上がってきたのかと思いそのまま眠りにつこうと思ったのですが,その足音は長男にしてはおかしな動きをしていたのです.
部屋を物色するように部屋を歩いたり,止まったりを繰り返していました.
「お兄ちゃんなにしてるんだろ.へんだなー」なんてのんきに考えていました.
しばらくすると,寝室に向かって歩いてくる音が聞こえてきました.
寝室と隣の部屋の境に,ごみ箱を置いていたのですが,ごみ箱のビニール袋にあたった音が聞こえました.
その音の主が兄だと思っていた私は,「なにー」といって起き上がりました.
するとそこには兄ではない何かがいました.
私はそれまで幽霊の姿は見ることができなかったのですが,
この日はあまりにもはっきり恐ろしい姿が見えてしまいました.
その幽霊は人間の形はしていませんでした.
漆黒の大きな塊がそこにいたのです.
暗闇でもわかるほど,明らかな漆黒がそこにはいたのです.
私はとっさに布団にもぐりました.
私の心臓はこれまでにないほど脈打ち,心臓の音が周囲に聞こえてしまうのではないかと思うほどでした.
その漆黒の何かはゆっくりと私に近づいてきます.
私は布団の隙間から外の様子をうかがっていました.
漆黒の何かは両親のベッドの隅をキシッと音を立てながらゆっくりゆっくりと近づいてきます.
息をひそめたいのに,心臓がバクバクしすぎて息が荒くなってしまいます.
音がしないように呼吸をしたいのに呼吸がいうことを聞いてくれないのです.
すると,キシッという音とともに目の前が漆黒で覆われました.
「もうおわった」
数分後,いや,今思えば数十秒後でしょうか.
長い長い時間でした.
その漆黒は私の頭上を通り,窓に向かって歩き出しました.
するとすーっと,あの身体の表面がぞわぞわするような,胸騒ぎがするような感覚が消え,漆黒の姿はなくなりました.
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