リフォーム会社の黒い霧
投稿者:YoyoYoyoY (52)
短編
2023/01/10
11:12
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祖父母の家の隣には、小さなリフォーム会社がありました。
わりとフレンドリーで、出入りしても注意されなかったこともあり、子供の頃は会社の裏の草むらで虫取りなどをして遊んでいました。
会社全体も活気があり、売上も良かったのか従業員もはつらつと仕事をしていました。
私は、そんな彼らの姿を見るのが好きでした。
あるとき、その会社が敷地内に倉庫を建てました。
それはどっしりとして頑丈な作りでしたが、どこか圧迫感のある独特な雰囲気でした。
その頃からです。
倉庫の周りに黒い霧がうごめくようになりました。
それは、うっすらとしたもので空に溶け込んではいましたが、明らかに良くないものでした。
(この会社、ダメになるかもしれないな)
子供心にそう思いました。
黒い霧は範囲を広げ、会社全体に広がって行きました。
そんなとき、社長が海外の女性に大金を貢いでいることが発覚しました。
社長夫人は激怒して、息子を社長に就任させましたが時すでに遅く、会社を支えていた優秀な従業員は去り、ほどなくして倒産しました。
私は真っ暗になった空っぽの会社を、残念な思いで見つめていました。
あれから30年、会社の跡地には新築一戸建ての家が数件建ち、新しい住民が生活をしています。
あの会社を知る人も少なくなり、風の噂で社長も天寿を全うしたと聞きました。
土地というのは、色んな歴史を背負っているものです。
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