「お、王よ!」クモ男とアゲハ蝶がハエの王の前に跪く。
ベールゼブブはサタンに次ぐ悪魔と恐れられている魔王だ。
病気と死を蔓延させ、反面豊穣をもたらす神とも呼ばれる。
ベールゼブブが唸るような声で朽屋に語り掛ける。
「ハッハッハッ、誰かと思えば・・・久しぶりだな、小娘、生きていたのか。少しは成長したか?」
「この一件に貴様が絡んでいたとは・・・」
クモとアゲハが前に出る。「王よ、お許しください。作戦は失敗しました。お慈悲を」
「ウム・・・お前たち、人間一人も殺せぬとはな。
そのようなものをわが軍に置いておくわけにはいかぬ。去れ」
そう言うとベールゼブブは触手のひとつを振った。
次の瞬間、クモ男とアゲハ蝶は青白い炎に巻かれた。
炎に焼かれながら、アゲハ蝶は朽屋に笑顔を見せながら手を振っていた。
クモ男もニヤリと朽屋に微笑んだまま、消し炭となって消えていった。
「自分の部下を殺したのか、ベールゼブブ!」
そう叫んで朽屋はベールゼブブの触手に弾丸を1発ぶち込んだ。
はじけ飛ぶ触手。
それを空中でキャッチする髑髏の顔をした魍魎。
吹き飛んだ自分の触手を持ち、元の場所に付け直すベールゼブブ。
「フフフ、なかなか良いではないか、ワシの腕を弾き飛ばすとはな」
ダメだ。力の差がありすぎる。この閉鎖空間では逃げ切れない。
殺される・・・朽屋はそう思った。
ベールゼブブが意外なことを口走る。
「あの蜘蛛と蝶は天国へ送ってやったよ。
恨みを忘れてしまった者は地獄には不似合いなのでな」
射撃姿勢のまま身動き一つしない朽屋。
「フフフ、先ほどのはアスタロトの弾丸か?・・・おもしろい。おもしろいぞ、小娘。
・・・今回はおまえに免じて見逃してやろう。もっと成長してワシを楽しませてくれ」
そう語りながら異空間に下がって行くベールゼブブ。
「待て、逃がすか!」
朽屋はもう一発、今度はベールゼブブの眉間に向かって撃った。
が、王を守る魍魎がその前に飛び出し、朽屋の弾を受け止める。
瞬間、はじけ飛んで青い炎を出しながら消える魍魎。























新年あけましておめでとうございます。kamaです。
こちらの作品を読む前に、前日譚として私の作品、
「恐怖! 地獄極楽夜行バス」を御一読されると、より作品が楽しめるかと思います。
また前作「事件記者 朽屋瑠子」も併せてお読みいただくと、より世界観が広がって楽しめるかと思います。よろしくお願いします。
元日早々に第二段投稿するとは早い。
クッチャルコ〜〜〜