翁の面
投稿者:N (13)
さすがにそんなAの様子を見てここ最近Aがおかしいことに気付いた俺達は「A、なんかおかしくね?」と勘繰り始めてた。
もしかしたら何か悩みがあるのかとも思ったが、それとなく探っても特に何も悩んでる様子はない。
だが、ある時Aの家に遊びに行くと、Aの部屋に翁の面が置いてあった。
俺達は咄嗟に「えっ」とハモってAに面について聞いてみた。
何とAはあの肝試しの際にこの面を持ち帰ったそうだ。
「おまえ、よくそんなもん持ち帰ったな」
「ん?あ、ああ」
ただ、Aがなんか腑に落ちないような顔をしていたのが気掛かりだった。
それで、俺達はいつまでもこうしていたら解決しないと思って、率直に聞いてみる事にした。
「おまえ最近何かあったの?」
「…いや、別に何もないんだけど、なんか意識が途切れるっつーか、ときどき記憶がなくなるんだよ」
俺達が神妙な面持ちで聞けば、Aは俺達がAがおかしいと感じた時に意識が遠のいてぼーっとする事を話してくれた。
その間は感覚的には起きてる感じには近いらしいんだが、自分が何をしているのかが分からないらしい。
その話を聞いた俺達は、Aが何か頭の病気なんじゃないかと思ってすぐに病院で検査してもらうようにすすめたんだが、Aは「んな深刻な病気とかじゃねえだろ、まだ十代だし」と笑い飛ばしてた。
「いや、でも、万が一ってこともあるし…」
結局、俺達が食い下がってもAは「まあ、まじでヤバくなったら行くから」と気怠そうに断った。
だが、俺達の心配とは裏腹に突然Aは亡くなった。
事故とかじゃなく、Aは自殺した。
Aは俺達が病院をすすめた三日後くらいに自室のドアノブに紐を括って首を吊っていたそうだ。
訃報を知らされた当時の俺達はにわかに信じられなかったが、Aの葬儀の際にAの兄貴からその事実を聞いて愕然とした。
俺達は、Aの兄貴が弟が何か自殺するような悩みが無かったどうかを俺達に聞いてきたからその時にAの自殺状況を知った。
それで俺達もAが亡くなる少し前からおかしいと思ってたことを伝え、意識が遠退くとか話していた事をAの兄貴に教えたんだが、Aの兄貴は「そういえば母さんもそんなことを…」とポツポツ呟いていた。
Aの兄貴はすでに実家を出てるため、年に数回しか帰省していない。
だから、あまり普段のAの様子は知らないのも無理はない。
だが、Aは実家暮らしだからAの両親はAが最近おかしいことに気付いていたそうだ。
Aの兄貴が俺達に接触したのは、俺達がAを虐めてるんじゃないかと怪しんでいたからだと、後から謝られながら聞かされた。
ただ、Aの遺品でもあるスマホのラインの会話を見て、俺達とAが親しかったと分かり、俺達がAについて何か知ってないか訊ねたらしい。
しかし、残念ながら俺達もAがどうして自殺したかなんてわかる訳もなく「すみません」と力不足に謝るしかできなかった。
が、去り際にAの兄貴から信じられない事実を聞いて息をのんだ。
Aは翁の面をつけた状態で首を吊っていたそうだ。
翁の面を持ち帰りよう仕向けかもしれない。
翁の面っていう時点でもう怖い