より子ちゃん (クリスマス特装バージョン)
投稿者:kana (210)
「もう帰らなくちゃ…」
そう言いながらより子ちゃんの方を振り向くと、より子ちゃんはもういなくなっていた。
母親に手を引かれながら何度も振り返るが、より子ちゃんの姿を見つけることはできなかった。
ボクは突然できて、そして「さよなら」もいえなかったガールフレンドの事を母親には内緒にした。
なんとなく恥ずかしかったからだ。
そしてなぜかその日から、ボクの体調は少しずつ良くなって行った。
次により子ちゃんに会ったのはその翌月、まさにクリスマスイブの日である。
S大学病院からの帰り道に、今度はボクが母親におねだりをして教会へ寄ってもらったのだ。
クリスマスのイルミネーションに彩られた教会の中は、あたたかな色の照明が照らされ、
高校生らしき合唱隊の讃美歌が響いている。
ボクと母は中に通され、運よくそれを鑑賞することができた。
しばらく讃美歌に聴き入っていたが、ボクにはもう一つ大事な目的があった。
より子ちゃんを探すことだ。講堂内に集まっている人たちをくまなく目で追う。
「きっとまた会えるよね」と自分に言い聞かせるように願うのだが、
その小さな白い天使の姿はなかなか現れてはくれない。
「ふぅ」と一息ついて下を向き、あきらめかけたその時、
ボクの隣にスーっと白い光が現れた。
「より子ちゃん!?」
思った通り、やっぱり教会でまた会うことができた。
ニコっと笑顔を向けてくれるより子ちゃん。
そして今日はクリスマスイブである。
ボクは密かに用意していたプレゼントをより子ちゃんに手渡した。
そうはいっても、女の子に何をあげれば喜ぶのかよくわからなかったボクは、当時自分がハマっていた鉱石採集セットの中から、かわいいピンク色のローズクウォーツを持ってきて、それをプレゼントにしたのだ。
「メリークリスマス、より子ちゃん」
手にしたローズクウォーツをしばらく目の前にかざして見て、笑顔になるより子ちゃん。
「よかった気に入ってくれたみたい」
それからより子ちゃんはボクの隣に座り、まるでそれが当たり前かのようにボクの手をずっと握っていた。
あたたかい空気がボクたちを包んでいる気がする。
母とボクとより子ちゃん、3人で並んで静かに讃美歌を聴いている。
なんだか世界がとても美しく感じられた。
いつまでもこの平和で優しい世界がずっとずっとつづいてほしい…。
ボクはそう願いながらまどろんでいた。
kamaです。
一部誤字脱字などを修正いたしました。また最初に6ページ目まで少し飛び出していたのですが、改行位置を改善したり余分な行を減らしたりして5ページに減量出来ました。
また、もともとの作品では小学生時代は「より子ちゃん」中学生~大人のセリフでは「頼子ちゃん」としていたものを「より子ちゃん」に統一しました。もしかしてどこかにまだ残骸が残っているかもしれませんので、万が一見つけた方はご報告よろしくお願いします。
素敵なお話でした。
↑kamaです。ありがとうございます。
この話はぜんぜん怖くないので、「怖いに投票する」ボタンが押しにくいですよねぇ。
よかったらかまわず押して行ってください。
先生、このシリーズ?も気が向いたら来年もたまに投稿するみたいな感じですか?
↑kamaです。先生ってボクのことですか?初めて言われたからこっぱずかしいです。
このお話は来年早々、少し動きがありそうです。
あと、実はこのお話には企画段階でいろいろなエンドを用意する案もありました。
まぁでも、割とファンの方もいますので、今のところはファンの方の夢を壊さないようにしたいと思っています。
解説ってあるんですか?
↑kamaです。
年初早々に動き・・・と書いたのですが、長くなってきていますので、
少し時間がかかっています。
あと、今回はクリスマスバージョンとして出したのですが、
クリスマスじゃない普通の話も出しておくべきかと思い、そちらも現在準備中です。
解説はまた回答編を用意しようと思います。