より子ちゃん (クリスマス特装バージョン)
投稿者:kana (210)
と、ステンドグラスから射す木漏れ日のような光の中に、
ひとりの少女がたたずんでいるのが見えた。
薄暗がりの中からゆっくり現れた彼女は、自分と同い年くらいに見えた。
病弱だったボクと同じように白く、まるで透き通っているかのように、
そしてうっすらと光っているようにも見えた。
彼女はボクのそばまで静かにゆっくりと近づいくる。
きっとこの子もボクと同じで、お母さんが買い物から戻るのを待っているんだろうな…。そんな風に思っていた。
「こ…こんにちは。お母さん待ってるの?」と聞く僕に、静かに首を振る少女。
どうしよう…。女の子とおしゃべりしたことなんかないから、何を話せば良いのかわからない…。
「な…名前はなんて言うの?」と聞くと、また静かに首を振る少女。
しばらく黙り込んだかと思うと
「名前…わかんない…」と消え入りそうな声で少女がつぶやく。
「えっ?名前わからないの?」
ボクは驚いたのと同時に突飛なことを言い出した。
今思えば子供だったからと言い訳したいのだが、ボクはその時
「じゃあ、名前を付けてあげるよ!」と言ってしまったのである。
いろいろ考えた挙句に付けた名前が「より子ちゃん」であった。
なんのことはない、前の日にテレビで見た映画の中に出てきたヒロインが「頼子」という名前だったのだ。
「じゃあキミの名前はより子ちゃんにしよう」
そう言うと、少女の顔はパァっと明るくなり、笑顔がこぼれた。
ボクは何か一緒に遊ぶものは無いかと考え、父にもらった小さな万華鏡のキーホルダーをポケットから取り出し
「ほら、ここからのぞいてごらん。キレイだよ」と言ってより子ちゃんに手渡した。
しばらく興味深そうに万華鏡を覗く彼女。
それをまた返してもらってボクも見る。
貸したり返したりしながら時間が過ぎていく。
なんとなくだけど、僕らの周りだけ少し光っているような気もするし、
十一月だというのになんとなく暖かい。暖房のせいだけではないような気がする。
より子ちゃんと一緒にいると、なんだか暖かい気持ちになってくるのだ。
そうこうしていると、母親が戻って来た。
そんなに時間はたっていないが、いそいで見て回ってお宝をゲットしてきたらしく、ホクホク顔である。
kamaです。
一部誤字脱字などを修正いたしました。また最初に6ページ目まで少し飛び出していたのですが、改行位置を改善したり余分な行を減らしたりして5ページに減量出来ました。
また、もともとの作品では小学生時代は「より子ちゃん」中学生~大人のセリフでは「頼子ちゃん」としていたものを「より子ちゃん」に統一しました。もしかしてどこかにまだ残骸が残っているかもしれませんので、万が一見つけた方はご報告よろしくお願いします。
素敵なお話でした。
↑kamaです。ありがとうございます。
この話はぜんぜん怖くないので、「怖いに投票する」ボタンが押しにくいですよねぇ。
よかったらかまわず押して行ってください。
先生、このシリーズ?も気が向いたら来年もたまに投稿するみたいな感じですか?
↑kamaです。先生ってボクのことですか?初めて言われたからこっぱずかしいです。
このお話は来年早々、少し動きがありそうです。
あと、実はこのお話には企画段階でいろいろなエンドを用意する案もありました。
まぁでも、割とファンの方もいますので、今のところはファンの方の夢を壊さないようにしたいと思っています。
解説ってあるんですか?
↑kamaです。
年初早々に動き・・・と書いたのですが、長くなってきていますので、
少し時間がかかっています。
あと、今回はクリスマスバージョンとして出したのですが、
クリスマスじゃない普通の話も出しておくべきかと思い、そちらも現在準備中です。
解説はまた回答編を用意しようと思います。