誰にも渡さない部屋

そんなイメージで、映像は消えました。
私のただの想像なのだろうか、それとも過去にあった事実なのだろうか。
そんなことを思いながら、友達に連絡してみました。
私の見た映像を伝えると、友達は驚いたようにこう言いました。
「言ってなかったけど、バスルームだけがキレイにリフォームされてたのよね」
ああ、やっぱりそうだったのだと、腑に落ちました。
「あの部屋は借りなくて正解！女の人が借りると、きっと良くないことが起こると思う」そう伝えると、友達もやっと諦めがついたようでした。

あれから数年後、友達があのマンションの前を通ったときのことです。

例の部屋のベランダで、若い男性が洗濯物を干しているのが見えたそうです。
部屋からは、若い人のエネルギーを感じたようです。
きっと、あの女性の心の傷も癒えて、新しい人生を踏み出したのだろうと思いました。
知り合いでもなく、会ったこともない女性ですが、彼女の未来が明るく開けたのだと思うと、何故か私も清々しい気分になるのでした。
きっと、あの部屋で起こったことは、もう思い出となって昇華されていることでしょう。
今は立派な社会人として、活躍しているかもしれません。
もしかしたら、いつかどこかで会うことがあるかもしれません。
袖触れ合うも他生の縁といいますから。