お迎えフロア
投稿者:ねこじろう (149)
突然山中さんの声が室内を響き渡った。
「わわわわ、何なんだお前たちは!?止めろお!来るな!来るなあ!!」
驚いて半身を起こし前を見るが薄暗くてはっきり見えない。
俺は思わずナースコールを押した。
しばらくするといつもの看護師が駆け付け、懐中電灯で前のベッドの方を照らしだした。
光の輪っかの中にあからさまになったのは、ベッドの片隅で怯えた子犬のように膝を抱き震える山中さんの姿。
看護師が近づきなだめだすと、
「来るな!止めろお!」としばらくは過敏に反応していたが、突然両目を大きく見開くと胸をかきむしるような仕草をして終いにはぐったりとなり、動かなくなってしまった。
すると看護師はポケットから素早く専用の携帯を出すと、どこかにコールし始めた。
しばらくすると室内が明るくなり、若い医師が別の看護師を伴い、ドタバタと部屋に入ってきた。
医師は、ベッドにぐったり横たわる山中さんの傍らに立つと、手首から脈を計ったり、聴診器を胸に当てたりしていたが、やがて隣に立つ看護師の目を見ると、静かに首を横にぶった。
3人はしばらくヒソヒソと話し合っていたが、しばらくすると、看護師2人が走って部屋を出ていった。
医師がその間ノートに何か書き込んでいると、2人が一台のストレッチャーを押しながら戻ってきた。
そして3人で山中さんの遺体を乗せると、そのまま押して部屋を出ていった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
山中さんがいなくなりとうとう病室に独りだけになって、一週間が経った、ある朝。
この日はいつもの看護師を伴って、担当医師が俺の枕辺に立っている。
「太田さん、術後の経過は良好です。今のところ他臓器への転移も視られず、このままいくと恐らくあと一月くらいで退院出来るかもしれませんよ」
そう言って初老の医師は俺の顔を見て微笑む。
俺は思いきって言ってみた。
「あの、そしたら、そろそろ、この部屋から別の階の部屋に移れないすか?ここ、どうも、苦手で、、、」
医師は意外にも、「ああ、そうでしょうね。じゃあ明日にでも別の階に移るようにしましょうね」とあっさり言うと、看護師を伴いさっさと立ち去った。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
そして夕刻。
「はい、太田さん夕食ですよー」
いつもの看護師がトレイに乗せた夕食を、ベッドに横たわる俺の前に置かれたテーブルの上に置いた。
大きめのプラスチックのお椀には、なみなみ注がれた熱々のシチューが入っている。
その横の小さな皿には、おにぎりが2個。
これは、この病院の入口前で毎朝行われている炊き出しと同じメニューだ。
入院してからも夕食は全てこれだ。
人肉系ね・・・
臓器売買かと思ったらそっちかーい!!怖!
死体の肉が患者に配られ、もしその患者が死ぬとまた肉になって配られる。
最悪の循環…