お迎えフロア
投稿者:ねこじろう (149)
「オッサンそんなこと言うなよ。
まだ分からないだろ?」
「そんな慰め言わんといてや。わし自分のことやから、よう分かるんや。間違いなく近々迎えが来るはずや。
まあずっと独りもんやし、めぼしい身寄りもないし、財産言うたら部屋で飼ってる猫くらいなもんやしな、、
でもわしまだ死にとうないんや。
なあ兄ちゃん助けてくれや」
「俺にそんなこと言われても、、」
山中さんのむちゃくちゃなお願いに俺が狼狽した後、しばらく2人の間に息苦しい沈黙が続いた。
すると彼は急に真顔になり唐突にこんなことを言い出した
「ところでなあ兄ちゃん、この階の一番奥にある404号室の話知っとるか?」
「いや知らんけど」
山中さんは黄色く濁った目をギョロギョロさせて俺を見ながら続ける。
「そこは【立ち入り禁止】の紙が貼られとっていつも鍵が掛けられとるんやけどな、前月まで隣のベッドにおった佐々木のじいさんが夜偶然中を覗いたことがあったらしいんや。あ、そのじいさんはもう前週亡くなってしもうたけどな」
「なんでもそこは体育館くらい広々としててなベッドがきちんと並んどって、部屋の真ん中にはでっかくて四角い鉄の機械がデンとあったみたいや。
その機械の周りではコンベアが、低い音をたてながらゆっくり回っとったそうや。
その間を白衣にマスクをした者たちがうろうろしてて、ベッドには男や女が横たわっとったらしい。入口ドアの隙間から覗いとった佐々木さんは、いったいこんな時間に何をしてるんやろ?と思いながらさらに見ているとパッと一瞬で背中が粟立って、思わずドアを閉じると逃げるように部屋に戻ったそうや」
「佐々木さんは何を見たんだ?」
俺が尋ねると、山中さんは一回だけ唾をゴクリと飲み込み続けた。
「あんたの隣のベッドに大野という30くらいの大柄の兄ちゃんがおったんやけど、ちょうど今年の初夏に脳溢血で逝ってもうたんやけどな。
佐々木さんが言うには、あそこに大野さんの裸の遺体があったそうなんや」
「そんなバカなこと、、
何かの見間違いとかじゃなかったんじゃないか?」
俺が言うと、山中さんは静かに首を横に振って続けた。
「わしも同じことを佐々木のじいさんに言ったんやけど、いや、あれは大野くんやった。間違いないって言い張っとったんや」
そこまで言うと、山中さんはいきなり咳きこみだした。
それはしばらく続いたが、やがて彼は天井を向いたまま静かになった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
そして新しい病室に移されて2日後のこと。
それは10時の消灯の後、しばらく経った頃だった。
暗闇の中ようやくうつらうつらし出した時だ。
人肉系ね・・・
臓器売買かと思ったらそっちかーい!!怖!
死体の肉が患者に配られ、もしその患者が死ぬとまた肉になって配られる。
最悪の循環…