奇々怪々 お知らせ

意味怖(意味がわかると怖い話)

件の首さんによる意味怖(意味がわかると怖い話)にまつわる怖い話の投稿です

確認ヨシ!
短編 2022/10/19 22:17 2,860view
1

 私はとある会社で、フォークリフトを使った倉庫内作業を行っている。
 人員不足の折、時間に追われつつの作業は、馬鹿正直にやっていては回らない、そんな雰囲気が職場を支配していたのは確かだった。

 その日、連日の残業で眠気を感じつつ、私はフォークリフトを操作していた。
 それでもいつも通り業務を続け、退勤時刻が近付いて来た頃。
 パレットに積まれたビールケースを上の段に置いた時、僅かに位置がずれた。
 許容範囲内と考え、次のパレットを置こうとした時。
「あ」
 ビールケースがゆっくりとバランスを崩し、倒れていった。
 倒壊する赤いビールケースは、丁度、近くを通っていた同僚Aを呑み込んだ。

 ビールケースの下敷きになったAは、全身の骨を砕かれ、生死の判断をするまでもなかった。
「何やってんだ!」
 社長が駆けつけた。

「申し訳ありません!」
 私は土下座する。
「救急車、は呼んだか?」
「あ、すぐ呼びます」
「待て」
 社長は集まってきた社員を見渡した。
「こいつ、身寄りなかったな」
「その筈です」
「ええ」
「……うちの会社は零細だ。こんな事故で仕事が減れば、すぐに潰れる」
 Aの血が広がっていく。
「お前ら、失業したいか?」

 皆、首を横に振った。

 私たちは、Aの死体を海に沈めた。
 この辺りはシャコが多く、すぐに肉はなくなった。後の骨は砕いて、改めて海に捨てた。
 身寄りのない彼の最期としては、こんなものだろう。

 ところが。
 1ヶ月ほどして、私の会社に女性が1人尋ねて来た。
 Aの婚約者を名乗る彼女は、Aの行方不明になった状況について、調べていた。
 その場は社長が取り繕ったものの、あまり納得した様子ではなかった。
 もし彼女が週刊誌なり、ネットで告発したり、警察に訴えるなり、何かしら行動を起したなら。
 真相に辿り着けないにしても、業務は相当に滞るだろう。
 どうやら、社長も相当対応に苦慮しているようだ。
 その証拠に「対策の会議をする」との連絡が入った。
 まったく、面倒な事になったものだ。

1/2
コメント(1)
  • こわいてすね。

    2022/10/20/21:24

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。