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ヒトコワ

ねこじろうさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

近所のレトロな床屋
短編 2022/09/19 17:59 5,217view
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うちの家の近くに小さな床屋があるんだよね。

くすんだ白い壁にはツタが絡まり、入口の上の看板は汚れて店名が消えかかっていてね、
ドアには昔々に流行したヘアスタイルの男性のポスターが貼ってあって『男は決めろ!』という意味不明のコピーとかが書かれているんだ。

ある晴れた休みの日のこと。
馴染みの床屋に行ったんだけど、その日はたまたまそこがいっぱいだったから、この店に行くことにしたんだ。

「はい、いらっしゃい」

オールバックの中年のマスターがスポーツ新聞をたたみながら、ノッソリとソファから立ち上がる。
50歳後半くらいかな。
ミジンコのように目が細くて角張った顔をしてて、でっぷりと肥えた体躯に白衣を着ているんだ。
店の真ん中には古ぼけた黒いリクライニングシートが一つだけあって、その前に大きな姿見がある。

どこにでもある街の床屋さんの店内だったな。

「どうします?」

鏡に映る僕の顔を見ながらマスターが聞くから、僕は希望のスタイルを言った。
髪を切りながら何気に尋ねてくるんだ。

「お客さん、家はどこです?」

「F町3丁目です」

「あれ、うちの近くじゃないの。
私ここでもう、20年やってるんだけど、お客さん、見かけたことないなあ」

「はあ……」

まさか行きつけの店がいっぱいだったからとは、さすがに言えなくてね。

そしたらマスターが訥々と語りだしたんだ。

「実は私ね、前は札幌にいたんですわ。
高校出てから理容学校に通って、免許とったんだけど、最初からいきなり店は開けないから、ある店に修行に行ったの。
当時はお兄さんのように私も若かったから、彼女がいたんだけど、その子も理容師で同じ店にいたんだ。
小柄で気の利く良い娘で、いずれは、その娘と一緒に店をやろう、と思ってたんですよ。」

髪を洗いながら続ける。

「ところがね、ある日突然その子、店辞めちゃって、いなくなったのよ。
あちこちかなり探したねえ。
でも、見つからなくて……
もうダメかなと思ったころ、意外なところで見つけたんだ。どこだと思います?」

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コメント(1)
  • こっわ

    2022/09/19/20:48

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