禁足地と人柱
投稿者:セカンド (1)
緊張の糸が解けた事で俺が気軽にそう話すと、
「……S君には暫く会えないかもね」
と、親父は一際小さくつぶやいた。
そして、再び歩き始めた親父に駆け寄ると、俺はふと浮かんだ疑問をぶつけてみた。
「さっきの話、Sが教えてくれたのと似てたけど、地元に伝わる怪談?てか他の友達ってその後どうなったの?」
と訊ねれば、
「俺以外全員亡くなったよ」
と親父は静かに教えてくれた。
その言葉が冗談なのか本当なのか真実を確かめる術を持たない俺は、拭ったばかりの額に汗を浮かべながら「そうなんだ」と相槌を打つ。
二日後、俺達家族は一足先に帰宅する。
実は本来ならば昨夜にでも帰宅する予定だったのだが、例の如く、親父がまた夜中に用事があると祖父と伯父を伴い家を出た為、俺達は伯父嫁と一緒に留守を頼まれていた。
当然、あの夜からSは帰宅していない。
その理由を伯父嫁は執拗に伯父に問い質していたが、伯父はひたすら「ちょっと謹慎中だ」と言うばかりでのらりくらりとかわしていた。
実の息子の消息が分からない伯父嫁は俺にも「謹慎中って何があったか知ってる?」と振ってきたが、俺も親父や祖父からあの日の事は口外するなと固く言われているので知らないフリをする他無かった。
ただ、ここまで徹底してSを、恐らくはあの神社に軟禁しているのだろうが、閉じ込めている様子をみていると、相当な逆鱗に触れたのだと俺は解釈していた。
そういった経緯の後、俺は帰路につく。
それから四カ月。
季節は冬に移り変わり、すっかりお盆での出来事を忘れていた正月明け。
電話をしていたおふくろが渋い顔をしてリビングに戻ってきた。
「どうしたの?」
「それがね…」
気軽に問いかける俺に反して、おふくろは神妙な面持ちで話してくれた。
その内容はSが行方不明となったというののだった。
おふくろは伯父嫁から連絡を受けて今の今まで話し込んでいたそうだが、どうにも伯父嫁は支離滅裂と言った具合に半狂乱で話すばかりでキリがなかったものの、意訳すればSとはあのお盆の日以降会えていないそうだ。
勿論、伯父にも問い質したそうだが、伯父もSが何処かに逃げ出したと一点張りするばかりで、そうしている内に伯父嫁が行方不明者届を出しに行ったが、伯父が普段のSの行いが悪かったと警察に話した事で失踪ではなく家出の線で話し合い、受理されるまでには至らなかった。
それからは早いものでSが失踪して四カ月経ったが、伯父嫁は突然居なくなった息子を思ってか、だんだんと情緒不安定となり、今では精神科に通院しているそうだ。
おふくろからSの近況を聞いた俺はひどく動揺していた。
おふくろには隠し通せていたと思うが、俺は内心で当時の事を思い出しては身震いしている。
その晩、帰宅した親父と二人っきりになった時、俺はおふくろから聞いた話を親父に話すが、親父は至って冷静に「そうか」と呟くだけだった。
そして、そんな親父の言葉にこの上ない不安を抱いていると、親父はふと俺を呼び止めてこう言った。
キョオオオオ!!
これぞ洒落怖って感じで面白かった
洒落怖入り候補ですね
個人的にはやっぱり小説っぽいのよりこういうテイストのほうが好きだな
Youtubeで聴きました。面白かったです。
おらこんな村嫌だ~。
似たような怖い話は、過去たくさん読んだり聞いたりしたから、なんとなくこうなるんだろうなと先は読めた。どんなに手を尽くしても助からない、足を踏み入れた段階で、死亡フラグが立つ人間が出る。命にも関わる話ような話なのに、大事な家族にきちんと伝えない他所の土地から嫁いできた嫁さんたちは、ブチ切れるのは当たり前。そんな、ツッコミどころ満載のはずの定番中の定番怪談でありがなら、ここまで読ませる文章力と表現力と破壊力。
親父さんの言う通り、「冗談だよ。冗談。」 「作り話だよ。当たり前だろう。」とビクビクしている。俺も田舎者。
凄く良かったです。
五回目の12年で60年。父親は5歳だったとしても、65歳、祖父は80~90歳。
高校生の俺は16~18歳。
かなりの高齢での息子なんだね。
↑別に父親、祖父が5回全部やったとは書いてなくね?
家族とか親族、村の人間って書いてあるんやで祖父の父とかがやったんじゃね
間違ってたらすまん
じわりじわり・・・と、怖さが増していきました。
方言がまんま地元と同じだから更に怖い
こええええええええええええ
キヨオオオオオオオオ!!!!!!!