禁足地と人柱
投稿者:セカンド (1)
俺がそんな断片的な事を口々にしていると、親父は不意に立ち止まって「やめなさい」と珍しく怒鳴る。
「はっきりと見てないならもう思い出さない方がいい」
そして、親父は目頭をおさえて唇を震わせた。
「アレ、何なの?Sはどうなんの?」
そんな親父を見据えて俺はとにかく気になった事を連ねる。
親父もこれ以上隠し通せないと思ったのか、それとも俺に話してもいいと思ったのか、深くため息をついた後に語り始めた。
「俺も子供の頃にあの場所に立ち入った事があるんだ」
親父の話はSが教えてくれた怪談話と酷似していた。
親父が小学生の頃、村祭りの帰り、あの山中横を通った際に肝試し感覚で無断で立ち入ると、同じように白いものを友達のAが見たそうだ。
当時、五人くらいの友人と居たそうだが、Aだけがその白いものの『顔』を見たらしく、Aがその人相を語ろうかとした矢先、件のSの様に発狂した。
すぐさま大人を呼んだらしいが、両親が暴れるAを取り押さえていると、暫くしてAが動かなくなった。
親父を含めたその場の全員が動転していたが、やがて地主の老人がやってくるとそのまま神社に連れていかれ、先ほどの様な儀式が行われた。
随分と長い儀式が終われば、A以外の親父達は家に帰されたそうだが、後日、Aが亡くなったと両親から聞く。
Sの怪談話と異なるのはこの先からだった。
Aの死後、何故か当時その場にいた子供達4名が呼び集められ、親父も当然その場に居た。
そして、Aの遺骨、恐らく腕の部分をそれぞれ均等に壺に入った状態で手渡され、例の山中へと連れていかれる。
進入禁止のロープから暫く進んだ先、二階建て一軒家程の高さの崖があるそうなんだが、その崖の上に祠があり、貫禄のある神主から遺骨を壺事あそこに投げ入れろと言われたので、親父達は戸惑いながらも、下投げでポーンと壺を投げ入れた。
当然、崖の上で壺が割れる音が聞こえたが、神主は何やらブツブツと言葉を捧げると大麻(おおぬさ)を何度も振っていたそうだ。
そして、親父は今回のお盆でその儀式が5回目だと話す。
確かSの話では儀式は全部で5回繰り返すと言っていたが、まさかあの話の一部は真実だったのかと俺は息を呑んだ。
「……Sは死ぬの?」
思わず俺は目先の不安を口にしていた。
親父は神妙な顔をして暫く答えずに考え込んでいたが、やがて、
「冗談だよ」
と、笑窪を作った。
俺は「ウソかよ」とツッコミを入れた後、心底安堵して冷や汗を拭う。
親父のあまりに迫真な演技に呑み込まれてしまった事が恥ずかしくなったが、親父の話が嘘だと分かれば何処か解放感がある様に思えた。
きっと立入禁止場所に俺とSが勝手に入ったからこらしめる為に一芝居打ったのだと思った。
それにしてはSは随分とボコボコにされていたので可哀相だったが。
「じゃあ、Sは暫く伯父さんに懲らしめられるのかな」
キョオオオオ!!
これぞ洒落怖って感じで面白かった
洒落怖入り候補ですね
個人的にはやっぱり小説っぽいのよりこういうテイストのほうが好きだな
Youtubeで聴きました。面白かったです。
おらこんな村嫌だ~。
似たような怖い話は、過去たくさん読んだり聞いたりしたから、なんとなくこうなるんだろうなと先は読めた。どんなに手を尽くしても助からない、足を踏み入れた段階で、死亡フラグが立つ人間が出る。命にも関わる話ような話なのに、大事な家族にきちんと伝えない他所の土地から嫁いできた嫁さんたちは、ブチ切れるのは当たり前。そんな、ツッコミどころ満載のはずの定番中の定番怪談でありがなら、ここまで読ませる文章力と表現力と破壊力。
親父さんの言う通り、「冗談だよ。冗談。」 「作り話だよ。当たり前だろう。」とビクビクしている。俺も田舎者。
凄く良かったです。
五回目の12年で60年。父親は5歳だったとしても、65歳、祖父は80~90歳。
高校生の俺は16~18歳。
かなりの高齢での息子なんだね。
↑別に父親、祖父が5回全部やったとは書いてなくね?
家族とか親族、村の人間って書いてあるんやで祖父の父とかがやったんじゃね
間違ってたらすまん
じわりじわり・・・と、怖さが増していきました。
方言がまんま地元と同じだから更に怖い
こええええええええええええ
キヨオオオオオオオオ!!!!!!!