つぐないの家
投稿者:LAMY (11)
小野さんは元来、霊的なものが全く見えない人間だったという。
その体質のまま二十年近く生きてきたそうだが、ある出来事があってからというものしばしば“そういうもの”を見るようになり、今では恐怖体験の数を数えるのに両手の指が必要な程度には「見える」人間になっている。
「いやあ、見えない人が見える人になるきっかけってのは…ほんと、突然やってくるもんだよ」
これは、そう口にした小野さんがまだ高校生の頃の話だそうだ。
小野さんの家の近所に、一軒の廃屋があった。
元は駄菓子屋だったそうだが、彼が生まれた頃には既に廃屋となって久しかったようだ。
彼が親御さんから聞いたところによると、その駄菓子屋は昔子供たちの定番の溜まり場だったということである。
昔気質のなかなか豪気なお婆さんが経営していて、普段は優しいし明るいけれど駄目なことをしたらとことん叱る、そんな人だったらしい。
私は店に来る子供はみんな自分の孫だと思っとる!が口癖で、子供たちからは鬼婆と恐れられつつもそれこそ第二の祖母のように親しまれており、小野さんの母親もしばしば店に足を運んではお婆さんに遊んでもらったり、面白い話を聞かせてもらったりしていたということだ。
しかし残念ながら、お婆さんは「みんなのお婆ちゃん」として親しまれたまま往生することは出来なかった。
事の発端は、万引きを捕まえたことだったという。
女の子も多く来るお店だったので子供向けのアクセサリーなんかも置いていたのだが、ある日お婆さんは品物の数が合わないことに気付いた。
もしや万引きされたのかと疑う彼女のところに数人の女子グループがやってきて、〇〇ちゃんがネックレスを盗んでやったって自慢してた――と告げ口をしたそうだ。
激怒したお婆さんは、後日店にやってきた当該児童を捕まえて烈火の如く怒鳴りつけたらしい。
本当の孫のように子どもたちを可愛がっていた分、裏切られた悲しみや怒りも大きかった、というのももちろんあったのだろう。
しかし、素直に認めて謝っていたらきっとあの人は許していたと思う…というのが小野さんの母の弁だった。
件の女の子は、怒り狂うお婆さんの前で泣きながらこう言ったというのだ。盗ってない、私じゃない、と。
少女の訴えはまさに火に油で、お婆さんは彼女の学校に電話をかけ、担任教師と校長を呼び出した。そして泣きじゃくる女の子を、呼び出した二人の前で散々に面罵し、お前たちの教育はどうなってるんだと捲し立てたのだという。
最終的には親まで呼んで、二度とうちの店に来るな、と言い渡してようやくお婆さんの激昂は収まった……のだが、これだけ大事にされて怒鳴り散らかされた女の子にとってはむしろそこからが始まりだった。
親に泣かれ、先生には問題児扱いで呼び出され。クラスメイトや同級生、それどころか下級生からも犯罪者呼ばわりされて、自分の言い分は誰にも聞いてもらえない。とてもではないが、それは小さな子供に耐えられる責め苦ではなかったのだろう。
女の子は数日後、学校近くの歩道橋から道路に飛び降りて亡くなってしまったのだそうだ。
その頃には荒れ狂うような怒りも冷めていたお婆さんは、件の報を聞いて大きなショックを受けたという。
けれどあれだけ怒鳴って罵ってしまった以上、今更言い過ぎたとも言えなかったのか。
お婆さんは誰かにその話を振られる度に、「あんな悪タレは死んで当然」「死んで逃げるなんて卑怯」などと悪態をついていた。
しかしある日、彼女は自分がとんでもない過ちを犯してしまったのだと知ることになった──。
その日、店に親子連れがやって来た。
険しい顔の両親に挟まれて、真ん中には泣き腫らした見覚えある顔。
それは、あの日万引きの犯人を告げ口した女子グループの中の一人だった。
「実は……」
すまなそうな顔をしてその子の母親が口にした言葉は、お婆さんにとって信じられないものであった。
素晴らしく、読ませられる文章。怖い。
これ、俺の地元の駄菓子屋かも……
導入のお婆さんと子供の話がいい。めっちゃ引き込まれた。
今回の作品もとてもおもしろかったです
毎回会話に引き込まれる いや引き込まれるって書いたら怖いか
目先変えて ほっこりする話しでも聞かせてほしいです
導入から引き込まれるし、退屈させない、オチでしっかり怖い話でした。
どういうジャンルの話書いても上手いんじゃないかなこの方…
ババアより嵌めた元友達の枕元に拍手しに行けよ
これ悪いのばばあじゃなく嘘ついたガキじゃね?化けて出るならソコ行けばいいのに
こえ~~~
悪いのはババアもなんだよなぁ。
「死んで逃げるなんて卑怯」だね。
死んだ後も責め苦を受けてるみたいだけど。
幽霊よりも簡単に手のひらを返しまくる人間の方がよっぽど醜悪で恐ろしいよ。
老獪な老婆が「片口」をどうして信じた。
年齢を重ねるということは、人間はウソをつき、誤解も思い込みもするという知識を経験則として身につけることだ。
だから人の告げ口よりも、自分の経験や印象、目の前の事実を大事にする。
それに反する密告者の密告など真に受けるだろうか。
良かった
怖いというか胸糞悪い話だな。タイトルも不気味でいいね。
うまいなぁ!
見えるきっかけってこう言うもんなんだろか?
駄菓子って最近ないやん!
みみたぶをたたく
いやまあ誰が悪いかを真剣に議論する場ではないから…w
描写が丁寧でいい話だと思いました
ドンマイバッバ
フォーエバーバッバ
まあババアもやり過ぎよね、みんなのお婆ちゃんたろうとする人のやる事じゃあないわ
子が死んだ後もなお悪口とかね
ぐう畜ババア
呪怨のトシオくんが首吊り死体を座りながら壁にドーンドーンってぶつけて遊んでるシーンを思い出してほのぼのした
おばあちゃんも○○ちゃんも可哀想だね。面白半分で行っちゃだめだよ。
子どもたちの焼きもちから派生したいたずらが、こんな恐ろしい形に変化するとは…。
この件に関わったかつての子どもたちも、親たち世代も、何らかの形で自分たちの過ちを問われることになるでしょうね。万引き事件を、もっと詳細に、丹念に関わってあげていれば、こんな悲劇にはならなかったはず。厳しさには優しさと愛がなければね。駄菓子屋のおばあちゃんは、ひとり暮らしだったんだろうか。冷静な判断をくだせる家族と暮らしていれば、また違った展開になっただろうに。この手の話は、後味が悪いだけに、じわじわとした怖さが残ります。
こう言う婆さんみたいに正論で人を傷つける人は無理。
本当にいい人は人を傷つける言い方はしない。
嘘をついた周りの子や万引き犯の女の子や家族にバチが当たりますように。濡れ衣を着せられた子は天国に行って幸せになりますように。
文章が読みやすくて良かったです。お話もとても良いです。
タイトルも的確な名作ですね。
是非、朗読で聴いてみたいですね。
怖くて話は良かった。万引きは余り良くないですね。罰当たりかもしれないです。
凄く怖いかったです。でも幽霊は意味がわからないです。
凄く怖いかったです
1番悪いのは無実の女の子に罪をなすりつけたクソガキだろ
↑そうだよ。なすりつけた子共だよ。
そういう子供にしたのはご両親だよ。
なんか普通に怖くない風になっているけどおばあさんがそこにいるだけでも相当な怖い話
こわいの前に、文章の書き方がとにかくお上手
情景が鮮明に浮かぶ、無駄がない、ちゃんとこわい
ストーリーも文章もかなり上手かった
ただ、そりゃ悪いのはそうだけどバッシングされながら後悔のままに死んだババアを死体蹴りするより
全ての元凶でありながら平然と勝ち逃げしてるクソガキたちに爆笑拍手しにいけやとは思ったね
自殺した子、婆さんのこと慕ってたんだろな…
自分を信じてくれず憎まれた事が、なにより悲しくて悔しくてたまらなかったのだろうな…
せめて婆さんが死ぬ前に心から謝罪をしていれば、彼女も怨霊になんかならなかっただろうに…
婆さんが自殺してからは、首謀者の子たちにいじめの矛先が向かったことは容易に想像できるね。
この環境じゃ…
1番タチが悪いのって「便乗勢」だよね。
ネットでもそう。
ぶっ殺された子どもがたのしそうならいいのだが
何故婆さんのとこにバッシングがいったのか全くわからん。嘘の密告した奴が首吊るってなら分かるが。
告げ口のガキ、取り巻きのガキでなく、婆さんがバッシングされたの??
女の子の親も担任も学校側もその子を信じてやれなかったんだよね?
学校「皆さん、あの店には行かないように」←どの口で言ってるの???
イジメられっ子自殺
イジメっ子が万引き犯だったとイジメっ子の親が知る
イジメっ子の親「婆さん所に謝りに行こう」
↑↑
これ!
本当にこれ!
これを純粋なフリした極悪と思うのは私だけか。
本当の悪魔ってこういう人だと思う。もう、おぞましい
胸糞だわ、嘘付いたガキとその仲間は呪われて早死にしてることを祈る
みんな悪を叩く正義になりたいんだよね…
爆笑拍手wをやめて成仏されますように。。南無。。
ところで、イジメっ子の親は立派な方でしょう。揉み消さずに我が子の罪を白日の下にさらした。わざわざ婆に謝りに行ったのだから、もちろん自殺した子の親にも土下座しに行ってるでしょう。下手したら自分の子供やその親である自分に対して、婆が受けたのと同じ社会的制裁が待ってるのに。
人の親たるもの、かくありたいものです。