後ろの頭陀袋

「ぺたぺたぺたぺた…」

その甲斐あってかだんだんと
足音は遠ざかっています。
出口までもあと幾分か終わりが
見えてきました。
早く出たい逃げこみたい。
そんな一心であるきました。
でも外は悪天候、濡れた靴はいたずらを働きます。
どしんっと大きな音がトンネルに響きました。
僕がしりもちをついた音です。
しまったと思ったのもつかの間

「ぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺた!!!」

さっきまで穏やかだった後ろの様子が

変わったのはその時でした。
今までとは打って変わって急速に
スピードをあげ、その影響で
トンネル全体に足音が響き渡ります。

「ぺたぺたぺたぺた!!ぺたぺたぺたぺた!!」

僕は慌ててさっと立ち上がり、
おなかが痛いのもなにもかも忘れて
なりふりかまわず走りました。
逃げなきゃ!!!
生存本能にしたがってのこりの
数メートルを必死に走ります。

「ぺたぺたぺたぺた!!ぺたぺたぺたぺた!!」
異音は収まるどころか増すばかり。

あちらもペースを速めてこちらに
近づいてきているのがわかります。
少しずつ少しずつ距離を詰めてくる
その得体のしれないナニカを必死に
振り払おうと全速力でこちらも走りました。
必死に必死に…!!
走っているうちにいつの間にか外に出ました。
月明かりが僕の額を照らします。
背中に感じていた嫌な気配はたちまち立ち消え
さっきまでの不気味な足音は、
ぴたっと止みました。
息を切らしながら僕は後ろを
振り返って様子を確認しました。
怖い気持ちもありますが足音が止んだという
変化を確認せずにはいられなかったのです。