後ろの頭陀袋
投稿者:きな粉もち (3)
長編
2022/08/03
01:34
10,585view
「ぺたぺたぺたぺた…」
「ぺたぺたぺたぺた…」
何度かその不気味な足音を聞いたところで
脳裏に感じていた違和感は
ぐっと大きくなりました。
足音というのはスリッパをはいてても、
革靴を履いてても運動靴を履いてても
どんな履物でも石材で舗装されたこの道では
高い音がなるはずなんです。
「ぺたぺたぺたぺた…」
「ぺたぺたぺたぺた…」
もう一度足を止め耳を澄ましました。
後ろを振り向くことも考えましたが
その不気味な足音の正体を確かめようと
いう気はおきませんでした。
靴から鳴る音じゃない、
おそらく素足から発せられるものに
悪寒を感じずにはいられませんでした。
ゆっくりゆっくりと
足音は近づいてきます。
「ぺたぺたぺたぺた…」
「ぺたぺたぺたぺた…」
素足から等間隔で放たれるそれの正体が
人であろうとなかろうと
こんな夜の雨のなか裸足で歩くものが
まともであろうはずがありません。
足音はゆっくりゆっくり近づいてきます。
声が出ませんでした。
体が震えて僕の息遣いが乱れます。
でも人間こういうときほど冷静なふりを
したくなるのが不思議ですね。
僕は冷静を装ってもう一度歩き出しました。
後ろの常識の外にいるであろうこいつに
意識を向けられるということが
怖くて怖くてたまらなくて何も知らないふりをしながら必死に必死に歩きました。
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 12票
間違い電話かな?
最後に何が起こったのか最後までぞくぞくするお話