狐塚のきつね
投稿者:cocoro (16)
『いこいこっ!』と息子。
木からするすると下りて、自転車の前かごにのせてあった駄菓子と飲み物をリュックに入れ、再び木の上へ登りました。
『おれら、木登りうまいな。ぜんぜん、危なくないやんな!』とT君。
『そうやな!また登ろか!』と息子。
『この場所は、二人だけの秘密の場所やで。ええな!』とT君。
『うん!わかった。』と息子。
『どこかから、木の板さがしてこなあかんな!』とT君。
『この枝に板渡したら、ベンチになるで!』と息子。
子供たちは勝手なことを言いながら、木の枝にしがみついて、おやつとジュースを飲んで景色を楽しみながら、わいわいと騒いでいました。
すると、また、大きな風がびゅ~っ!と二人に向かって吹いてきたのです。
すごい風だったので、二人は飛ばされないように、しっかりと足と手を木に巻き付かせました。
『さっきから、たまにすごい風吹くなあ』と息子。
『危ないから、そろそろ、夕方やし帰ろか?』とT君。
『そやな!帰ろ帰ろ~!』と息子。
息子が帰ろうと木を下りようとし時、足元が滑り、ずるずるずるっと落ちかけ、なんとかしっかり握っていた枝のおかげで、ジャンプしたら地面が届く高さで止まりました。
『ふ~っ、あっぶね~!』と息子。
『危なかったな~!』とT君。
隣の木から先に下りていたT君は、いそいで息子のそばへ駆け寄り、腰をもって着地を手伝ってくれました。
あちこち擦り傷だらけです。
でも、災難はここからが始まりでした。
さあ、帰ろうと二人は自転車のそばまで下りてきました。
リュックをかごに入れ、息子は自転車の鍵をいつものポケットに手を突っ込んで探しました。
ありません。しかも、ポケットのチャックが開いてしまっているのです。
ええっ!!息子は慌てました。いままでチャックが開いていたことはありませんでした。
T君に『どうしたん?』と聞かれて、事情を説明し、
『いつものポケットやろ?』と手を突っ込んで探してくれたけど、やっぱりありません。
二人で『あっ!!』と顔を見合わせて、慌ててさっき落ちかけた木のところまで戻りました。
二人は焦りました。
もう5時になるからです。
時間がありませんてした。
狐かまってほしかったんかな、かわいい