その日もやはり、俺は例によってあのトンネルの前へと来ていた。
確かに俺へと近付いて来ている女性の姿に、夢の中の俺は恐怖に震え上がった。今すぐこの場から逃げ出したいのに、地面に張り付いた足は一歩も動かすことができない。
「──!?」
微かに聞こえてきたその音に目を凝らして見てみると、距離が近付いたことで見えてきた、血だらけの女性の口元が動いている姿。
あれは、あの女性の声なのだ──。
そう理解した瞬間に夢から覚めた俺は、ガタガタと震える身体を抱えてベッドの上で丸まった。
「いやだ……。いやだ……っ」
何を言っているのかまでは理解できなかったが、分かりたくもない。俺は本能的にそう思った。
その日を境に、夢と現実のどちらにも現れるようになった女性。悪夢に魘《うな》されて目覚めると、必ず現実の世界にも姿を現す。しかも、現実の世界でも段々と俺に近付いて来ているのだ。
それに気付いた時は、ただただ恐怖した。
(このまま俺の目の前まで来てしまったら……その時、俺は一体どうなるんだ……っ?)
そんな不安に駆られた俺は、ここ2日ほどひたすら睡魔と闘っていた。
あの夢さえ見なければ、現実の世界に女性が姿を表すこともない。とはいえ、睡魔に抗うのは中々難しい。
「── !」
危うく閉じかけた瞼を懸命にこじ開けると、眠気覚ましでもしようと久しぶりにパソコンを開いてみる。あれほど気にしていた再生回数も、ここ5日程全く見ていなかった。
「──900万!? フォロワーが……っ、10万人も増えてる!?」
あり得ない数字に驚愕しつつも、今のこの状況を考えると心から喜ぶことはできない。
カーソルを動かしながらコメントを流し見ていた俺は、あるコメントに目を止めるとピタリと固まった。

























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