「……慶太、どーした?」
カタカタと震える右手を前方へと伸ばした俺は、信号待ちで混雑する人混みの中を指差した。道路を挟んで向こう側に見えるのは、夢の中で見たあの女性と全く同じ姿をした女性。
まるで信じられないものでも見るかのような表情で硬直した俺は、隣にいる輝に向けて小さな声を絞り出した。
「そこに、いる……」
「え? ……何が?」
そう言って俺の指先を辿った輝は、小さく首を捻るとその視線を俺へと戻した。
「いるって、何が?」
「……っ! いるだろ! 血だらけの女がっ!」
「……いや、そんな人いないよ」
青へと切り替わった信号で人の波に押し出されると、血だらけの女性を見失った俺は半狂乱になって叫んだ。
「嘘つくなよっ! あそこにいただろっ!?」
「ちょっ……、慶太どうしたんだよ!?」
輝の手を振り解くと、血眼になってあの女性の姿を探す。けれど、一度見失った女性の姿を見つけ出すことはできない。
「きっと疲れてるんだよ。今日はもう、帰って休めよ」
そう言った輝に見送られて自宅へと帰ってきた俺は、その日は日課であった再生回数の確認をすることもなく眠りについたのだった。
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