海で見たもの

去年の夏休みの事だけど、 大学のゼミで一緒の友人に誘われて旅行へ行く事になったんだ。

目的地は伊豆半島の先端近くにある旅館でね、 そこに一泊二日の予定で行ったんだ。

もちろんその時はまだ学生だったからさ、 車を借りたり宿を取ったりするのは全部自分達でやったんだよ。

宿の部屋割りなんかも適当で、 一人部屋と二人部屋に分かれて泊まったんだ。

ちなみに俺と友人は別々の部屋に泊まる事になっていた。

ところがその夜になって、 俺だけ一人きりになる時間ができたんだよ。当然、一人でいるのが寂しく感じられてね、 友人に電話をしてみる事にしたんだ。

そしたら運よく部屋の番号を聞いたら同じフロアだったので、 早速訪ねてみる事にしたんだ。

するとドアを開けてくれた友人が笑顔で迎えてくれたのでホッとしたんだけど、 何やら様子がおかしかった。

どうも友人は酔っぱらっているようでね、 足元がふらついていたんだ。

「大丈夫か？」

って声をかけたんだけど、 返事はなかった。

そしてフラつきながら俺を部屋の中に招き入れてくれたんだけど、 そこで俺はゾッとする光景を目の当たりにしてしまったんだ。

友人の顔色が真っ青になっていて、 その顔からは血の気が失せていたんだ。

しかもそれだけじゃないんだよ。

彼の首筋にはいくつもの手形のような跡があってね、 それが不気味に赤く腫れ上がっていたんだ。

その手形の跡を見た瞬間、背筋が凍るような感覚に襲われて思わず身震いしたよ。

そして俺はすぐに友人の異変の原因を悟ったんだ。