視える
投稿者:偽美 (28)
私は、小学四年生の頃に「視える」ようになりました。
その当時は、幽霊や妖怪の類いをあまり信じていませんでしたが……今思うと、それは本当に偶然だったと思います。
ある日のことです。私がいつものように学校から帰宅すると、玄関で祖母が泣いていました。
何事かと思い駆け寄ると、祖母は言います。
「ああ、やっと帰ってきた! お帰りなさい!」
その声を聞いた瞬間、私の背筋にはゾクッとした悪寒が走りました。
その時の祖母の声音は、とても嬉しそうなものでしたが……しかし何故か、不気味さを感じてしまったのです。
その後、祖母は何事も無かったかのように普通に接してきました。
私も最初は気にしていませんでしたが、それから数日後のこと。今度は母が泣きながら帰ってきました。
「ああ、良かった! 無事だったんだね!?」
そう言うなり母は私を強く抱きしめて、涙を流し続けていました。
私はこの時初めて、自分の身に起きている異変に気付きました。
――何かがおかしい。
そう思った私は、両親に詳しい事情を聞きました。
どうやら両親は、この数日の間に交通事故に遭ったらしく……幸いにも命に別状は無かったようですが、事故の影響で身体の一部を失い、後遺症が残ることになったようでした。
つまり、二人は車に乗っている時に何らかの理由で事故を起こしてしまい、怪我をして入院していたということらしいのです。
しかし、それならば何故、病院ではなく自宅に戻って来ていたのか? 不思議に思い質問したところ、二人とも目を逸らすばかりで答えてくれません。
そしてそのまま、詳しい話は聞けずじまいでした。
こうして、両親が突然姿を消した理由が明らかになりました。しかし同時に、私はある疑問を抱くことになります。
どうして二人は、私のことを心配してくれなかったのだろう……と。
当時の私は、自分が特別な存在だと思っていました。
他の人とは違う不思議な力があるのだと、心のどこかで思っていたのです。
だからこそ、両親の態度に疑問を覚えました。まるで、私の存在が消えたような扱いを受けた気がしたからです。……これは後から知ったことですが、実はこの事故をきっかけに、私の両親は離婚することになったのだそうです。
そして私は母方の祖父母に引き取られることになり、転校することになりました。
私は新しい土地でも、今までと同じように暮らしていきたいと考えていました。
けれど……祖父母の家に向かう途中、車が故障してしまったのです。修理に出しても、すぐに直る保証はないと言われました。
そこで祖父が提案したのは、タクシーを呼ぶこと。
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