池の化け物
投稿者:偽美 (28)
あれは、もう十年以上前になると思います。
私が住んでいた町には、大きな公園がありました。そこは大きな池があって、ボートに乗ることもできたのですが、その池が問題だったんです。
というのも、夜にその池に近付くと、何かの影が見えるという噂があったのです。それは、池の中に潜んでいる巨大な化け物だと言われていました。
もちろん、そんな噂を信じる子供はいませんでしたけどね。ただ、夜中にこっそり行ってみたことがある子はいました。そしてその子は……二度と帰ってきませんでした。
翌日になって警察が来て、池の中で死体が見つかったそうです。その子は溺死していました。
それからも、何人かの夜遊び好きの子が行方不明になりました。
大人たちはみんな言いました。
「あの池には近づくな」
って。それで、きっとその化け物の仕業に違いない!と誰もが思うようになったんです。
そんなある日のこと。いつものように学校から帰ってきた私は、ランドセルを置いてすぐ出かけました。
実はその日、学校で先生たちから注意されたことがありまして……。それが、
「夜の公園に一人で行くな」
というものだったんです。なんでも、最近この辺りでは不審者が出るらしくて。しかも、中学生ばかりを狙っているとか……。
だから、怖かったんですけど、私の家がある団地の近くには大きな公園しかありませんでしたから。そこに行くしかなかったんです。
えっと、それでですね……一応、両親にも行き先を伝えてから出掛けたんです。ちょっと心配そうな顔をしてましたけど、
「気を付けて行ってくるんだぞ?」
と言ってくれました。
そして私は、無事目的の場所に到着したのですが……。そこには先客がいました。いえ、正確にはいたのではなく、そこで待っていたと言うべきでしょうか。
だって、そこに立っていたのは……白い服を着た女の子だったんです。髪が長くて、とても綺麗な子でしたよ。年齢は私と同じくらいでしょうか。
彼女は私の姿を見ると、笑顔を浮かべながら手招きをしてきました。正直言って、少し怖かったです。それでも、彼女の誘いを無視するわけにはいきません。
私はゆっくりと近づいて行きました。すると彼女は、突然腕を伸ばしてきたんです。まるで抱き締めてくるかのように。
びっくりしましたけど、なんとか悲鳴を上げずに済みました。そのままじっとしていると、今度は彼女が私の手を握りしめてきました。ひんやりとしていて、氷みたいだと思いました。
そして、彼女は言ったんです。
「ねえあなた……あたしと一緒に遊ばない?」
結局、私は彼女と遊ぶことになりました。何をするのかと思っていたら、彼女はいきなり走り出したんです。それも結構速いスピードで。
最初は転びそうになったりもしましたが、すぐに慣れてきて楽しくなりました。そうやってしばらく走っているうちに、だんだん人通りが少なくなってきたような気がします。
やがて私たちがやってきたのは、小さな橋の上でした。周りは草木に囲まれていて、薄暗い感じの場所です。その時はまだ昼間だったのですが、なんだか不気味に思えたことを今でも覚えています。
その橋の真ん中あたりまで来た時、彼女は立ち止まりました。そして振り返ると、こう言ってきたんです。
「さあ、ここから飛び降りるわよ!」
は? と思った時にはもう遅く、私は彼女に突き飛ばされていました。背中を強く押されてバランスを崩してしまい、欄干を乗り越えてしまいます。
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