絵画の家
投稿者:四川獅門 (33)
「絵画の家って知ってる?」
「知らん」
彼女の心霊スポット巡りに内心うんざりしていた。
デートとなればショッピングモールか心霊スポット。それが2人の中で定番になっていた。
「ヤバいらしいよ。」
「ふーん……」
絵画の家について彼女の説明が始まった。バブルの頃に町の外れに建てられた洋館風の一軒家で、誰かの別荘だったらしい。
家中に絵画があり、中でも2階の一室に飾られた絵を見ると呪われる。
「やばいでしょ!?」
「ありきたりだなぁ。動物園とか映画館とかは?」
「じゃあ1人で行くからいい!」
結局2人で行くことになった。
部屋から車で30分ほど。寂れた田舎道。
廃病院、廃ホテル、廃おもちゃ屋さんなんてものもある。廃墟の数を数えているとやけくそな気分になった。
町外れから隣町へ続く古い林道がある。新しく道路が出来てからはほとんど人が通らなくなったらしい。
その林道の途中に例の家があった。
「ここだよな……」
「外観からヤバい感じだね」
オレンジ色の屋根は所々剥がれていて、白い壁には植物のツタがびっしりと這っていた。玄関への道は草が鬱蒼と茂っていて、来たことを後悔した。
玄関の鍵は施錠されていて、1階の大きな窓の割れ目から、リビングへと入った。
「確かに洋館っぽいな」
「雰囲気あるね!」
内装はいかにもバブルの産物といった様相で、シャンデリアや大きな振り子時計、暖炉もあった。
噂通り家のあちこちに絵画が散見できた。
『巨大なレッドドラゴンと日をまとう女』
『蚤の幽霊』
家主はウィリアム・ブレイクが好きだったらしい。絵画は壁中に書かれた落書の中でも異様な存在感を放っていた。
「2階、行ってみるか?」
「……うん。」
階段の壁には全く同じ女の絵が3枚並んで飾られていた。さすがに少し不気味だった。
2階の一室のドアを開けた。何かおかしい。
彼女…