”つかれるほど”遊んだ日
投稿者:京東京 (1)
私が仕事中に、部屋にいた恋人が私に「扉がノックされたり、勝手に開く」という電話をしてきた。その日はその電話の後にすぐ仕事が終わったので、家に帰り、恋人に話を聞くと、5分~10分に一回部屋の扉が叩かれたり、勝手に開いたりするというのだ。
もちろん風で簡単に開くような扉ではないので、二人で「幽霊かな?」とか「引っ越す?」と話し込んでいた。この間の下の階の住人の話も思い出して、この部屋は何かいるんじゃないかという話になった。
その時に恋人から私が家に帰ってきてから、一切ノックがされないことに気付いた。5分~10分に一度あったことが、急になくなったのだ。確かに恋人からしたら不思議なことだろう。
そこで私は、もしかして、私の周りについているあの謎の「ひとがた」の存在が、いまだについてきているのではないだろうかとひとりで考えた。もちろん恋人には黙っていた。
ある日、知人の紹介で、ある人とお茶をすることになった。お仕事関係の相談に乗ってもらうためだった。
その方は話がひと段落したときに
「〇〇さん、もしかして、何か憑けてます?」
と、耳を疑う一言を放った。
私が何のことか聞き返すと、その方は霊感というものがあるらしく、なんとなく存在が見えるらしい。
あんまりそういう類の力を持った人の話は信用していないけれど
「悪いものではないような気がするけど、生霊かな?これ?ひとのかたちしてるね。」
とどんどん話を進めていって
「たぶん、あなたのことを独占したい存在が憑いている」
と割と具体的なことを話してきたあたりで、次の約束があったので、その方とは別れた。一応簡易的なお祓いみたいなものはしてもらったけれど、肩が軽くなったり、ということはなかった。
「私のことを独占したい人」と考えたときに、恋人とかだとしたらいいのにと思った。
その時にお休みで部屋にいた恋人から電話が鳴り「また部屋がノックされる」と。
私は次の約束をキャンセルし、部屋に戻った。戻ったら不思議な現象は止まったと恋人は言う。
そこで恋人が、私がいない時に扉の前に人の気配を感じることがあると聞いた。
二人とも婚約の話をしていた最中で、そんなことが頻繁に起こっていて、私が生霊がついているかも知れないと言われた話をしたら、ついに、相手から別れを切り出された。
他に好きな人がいるわけでもなく、ただ恐怖感というか、私と一緒に居たら何かが起こるのではないかというそんな私にとっては納得出来ない理由だった。
そして、一人で住むには少し広い家で、私は心身ともに疲弊し、上手くいっていたことがどんどん悪い方向に進んでいる気がして、何かが崩れていくような感覚に悩まされ、ある日携帯を解約し、自殺場所を探そうと適当に自暴自棄の旅をした。
だけれど死ぬ勇気もなくて、ある日警察に職務質問されて、結局連絡が付かなくなった私を心配して、捜索願を出していた両親に引き取られて実家に帰ることになった。
実家では廃人のように一日中ぼーっとしていた。
その中で、たまにトイレの前の廊下を歩いていると、内側からノックされた。
「またかー」くらいに思った。
もうリアクションするのにも疲れていた。
何者か分からないけれど、なんか私に何か伝えたい存在がいるらしい。
そして実家に戻って1か月ほど経った日の夜に金縛りに合い、白い「ひとがた」が馬乗りになるような体制で私の首を思いっきり絞めてきた。
いつもの金縛りなら、解けたら目が覚めるけれど、その日は首を絞められた痛みで、そのまま朝まで気を失っていた。
朝、顔を洗うために、洗面所の鏡を見て、私は、恐怖よりも何か納得してしまった。
首にあざが出来ている。
紫色に染まった両手の跡がはっきりと。
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