そして、
「ごめんごめん、襖開けるときにビックリさせすぎたね」
と、普段の温厚な表情で僕に謝罪してきたのです。
一瞬、二重人格なのではと疑ったものの、僕は恐怖から「……あはは」とただ苦笑して受け流す事しかできませんでした。
その後、かくれんぼは全員が鬼をやるまで三回続き、ちょうど夕暮れ時に全員が鬼を体験して終了となり、晩御飯の兼ね合いからお開きになったのですが、その帰り道、C君が妙な事を切り出したのです。
「……あのさ、俺押し入れに隠れたんだけど、なんか変なの居た」
「あ、俺も俺も。客間のとこだろ?」
「マジ?俺も隠れたんだけど、何か変な声聞こえた」
C君を皮切りにB君A君とそれぞれが申告を始めたので、僕も先ほどの体験を鮮明に呼び覚ます事になり、
「僕も何かに足首を掴まれた、ような気がする……」
と少し自信無さげに申告しました。
それからそれぞれの体験した話を聞けば、何でも何かが押し入れの奥に蠢いていたとか、何かが背中にぴっとりと寄り添ってきたとか、ずっと耳元で囁かれただとか、僕を含めた四人が似通った体験をしていたことが分かったのです。
もしかしたらD君には僕達と同年代の兄弟が居て、あの押し入れに隠れて悪戯を決行していたのではと突拍子もない意見が飛び交うものの、どう思い返してもあの押し入れに僕達子供一人分以上のスペースが無かった為、次第に意気消沈と議論は沈静化するのでした。
また、別れ際にA君が、
「……実はさ、トイレいった時にDにかくれんぼしたいんだけど恥ずかしいから言い出しづらいって言われて、俺から持ち出すように頼まれた」
と、暴露したことで、僕達は益々D君の悪戯説を有力視したのです。
しかしながら今日はもう日が沈んでいるので、明日学校で問い質す事にしようと全員の意見が一致し、僕達は解散しました。
ですが、翌日D君は学校に来ませんでした。
その日は体調を崩したのか、はたまた僕達にした悪戯がバレて怒られるのが怖くてズル休みしたのか。
その程度の浅い理由だろうと決めつけていた僕達は、「少し注意する程度で許してやろう」と話し合いで決めました。
が、翌日以降もD君は学校に現れなかったので、不安になった僕達は担任にその所在を訊ねたのですが、担任は回答を渋ったと思うと少しばかり困った表情をして、僕達一人一人を見据え、
「まあ、いずれ分かるか」
と零した後、
「D君家は引っ越したよ。お前達が寂しがるだろうと、暫くは話さないで欲しいってD君から口止めされてたんだ。悪かったな」
担任からD君一家が引っ越した事を告げられた僕達は開いた口が塞がりませんでした。
勿論、僕達に悪戯を仕掛けておいて謝罪も無く引っ越したD君に呆れていたからです。
「つめてえなあ、D君」とB君が零す中、僕達はとぼとぼと黄昏た廊下を歩くのでした。
D君の突然の引っ越しを受けて友達が一人減り、再び僕はA君B君C君の三人と遊ぶ毎日を繰り返していると、あっという間に小学校卒業を間近に控える歳になっていました。
D君の姿や形を忘れかけ、中学生活に向けて勉強をしていた僕は不意に自室のクローゼットに違和感を覚え、シャーペンの動きを止めてシンと静まり返った背後を振り返ります。
特段何もないクローゼットですが、その扉の前に立った時、僕は妙な既視感を覚え、D君という人物と遊んだ時の記憶を呼び起こす事になったのです。
結局なんだったんだ…不気味だ
顔が思い出せないなんて・・・・
ためはち
うわー不気味で夜しか眠れない
怖い…のか?