押入れの子ども

数年前の話なのですが、仕事の都合上一人暮らしを始めたことがありました。
行き来するのが無理というほどの距離ではなかったのですが、実家の自宅まで地味に距離があり、不便だという理由でアパートを借りたのです。

まわりはとても閑静な住宅地で、近くに大きなスーパーやコンビニがあり、非常に住みやすいと思っていました。
そんなアパートでまさかあんなことが起こるだなんて、想像していなかったです。

私はもともとあまり広い部屋が好きではありません。
昔から怖がりだというのもありますし、部屋の大きさは生活できたらいい程度のコンパクトなものを望んでいました。

だからこのアパートを紹介されたときは、「丁度いいな」と思ったのです。
このサイズなら安心して暮らせそうと思いました。

そのアパートは2部屋に区切られており、玄関から入るとキッチンに直通で、その奥に寝室があるというような構造になっていました。
アパートで暮らし始めて数日間はとくに大きな問題もなく、のびのびと過ごせていたように思います。

しかし、数か月も経たない内に、私はさまざまなトラブルに見舞われていました。

まず一つが体の不調です。そのアパートの住み始めて、異様に体調を崩すことが増えたのです。
それまで仕事をしていて、体調が優れずにお休みするというようなことはほとんどありませんでした。

しかし、このアパートの住み始めて、急に体調が優れなくなり、度々休みを取るようになったのです。

症状としては頻繁に頭痛が起こり辛かったり、お腹を下してしまったり、急に吐き気を催して病院に行ったり、風邪でもないのに咳が出て、「顔色が悪い」と上司から心配されたり、病気まではいかなくても、体中のいろいろなところに問題が出て、仕事に支障をきたしました。

最近体調不良でまずいなと思った私は、頻繁に自炊をするようになりました。
最初は一人暮らしになったことで、食生活が悪かったと思ったのです。だから外出先で食べるのを減らし、自宅で自炊して体の健康を考えながら過ごすようになりました。

だから前よりも家にいる時間が増えたのですね。
そうなったことで、家のさまざまな現象に悩むようになりました。

私に最初に起こった現象はおそらく耳鳴りだったと思います。

アパートで自炊していたら、突然耳鳴りが聞こえるようになりました。
この耳鳴りというのが本当に頻繁にあって、私はより頭が痛いとイライラしました。
それから夜間の足音。上の階から酷いほどどたばた足音が聞こえまして、私はこれにも悩まされました。

それでもまだこの二つは疲れやご近所トラブルだと思ったので、まだ良かったのです。
一番悩んだのが、押し入れから聞こえる物音でした。

私の住むアパートの寝室にはクローゼットがなく、代わりに昔ながらの押し入れがありました。
私はそこに布団を片付けており、空いたところは何も入れていなかったです。
最初は軽い洋服ダンスなどを入れて服を出し入れしてようとしたのですが、あまりにその押し入れが古びていて、ちょっと気味が悪いなと思いました。
それが理由であまり使わず放置してあったのです。
その押し入れから度々物音がするのが一番私にとって厄介でした。