廃屋に佇む怖い老婆
投稿者:ヤマネ (18)
20年ほど前、東京都内で警備員のアルバイトをしていた時のことです。日差しの強い初秋のある日のこと、都心に近い住宅密集地で、工事現場の警備が始まりました。
現場で私が担当したのは、車が入れないような、ひときわ細い路地の一角です。周囲は新しい住宅もありましたが、土地柄で昭和初期のような古びた建物が目立っているエリアでした。
周囲を見渡して気になったのは、ビルの影に隠れて陰気な、一軒のボロボロの廃屋の存在でした。もう昭和を超えて大正かくらい、築百年は建っているであろう古民家です。家全体につる植物が絡まっていて、誰が見ても空き家のように見えました。
警備が始まると、地下鉄の駅も近い路地なのに、人通りがほとんどありません。時計を見るともう16時近くなって、空も暗くなり始めて仕事の終わりを考え出していました。
そんな時に何気なく、闇に覆われ出したボロボロの廃屋に目をやりました。すると入り口らしき暗がりのところに、ボーッと白い老婆が立っていて、じっと私を見つめていたのです。何かその姿は、この世の住人じゃないような気がして、いつまでも見つめられると、引きずり込まれるような怖さを感じるほどでした。
そこから時間が止まったようになり、仕事終わりまで嫌な視線が続きました。
ようやく仕事が終わる頃になると段辺りは真っ暗でしたが、視線を廃屋やはりその古民家は明かりも付いていません。さっきの老婆は幻影かと思い始めていました。
そんな時に先輩が後ろから近づいてきて、言いました
「連れて行かれなくてよかったな」
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