いい人ほど報われない
投稿者:レイレサ (64)
数子さんはすぐに応援のボタンを押したが、誰も応援に来なかった。
何度も何度も応援ボタンを押したのに誰も来ない。
若い女性客は困った顔をしているので、何があったのか聞いた。
「子供がおもらししちゃったので、掃除するもの貸していただけないでしょうか?」
数子さんは何度も応援ボタンを押したが誰も来ない。
レジに置いてあったティッシュ箱と袋を女性客に渡して「直接応援呼んできますのでお待ちください」と伝えてバックルームに走って行った。
バックルームに入った数子さんは唖然とした。
事務所のドアに内側から鍵がかけられており、外から入れないようにされていた。
事務所の中ではパート数名がぺちゃくちゃ楽しそうに会話をしていたのだ。
これでは応援ボタンの音も届きそうにない。
数子さんは事務所のドアをドンドン叩いて中のパートを呼んだ。
パートの1人がニヤニヤしながらドアを開ける。
数子さんは応援ボタンを押したのになぜ来てくれないのかと文句を言った。
するとパート数名がニヤニヤしながら「だって聞こえなかったんだもん」と言い訳してきた。
数子さんは「お客様が困っていたんです、お子様がおもらししちゃって応援必要だったんです」と事情を説明しても、パートは数子さんを無視してまたぺちゃくちゃ話を続けてしまった。
数子さんは悲しくなった。
お客様が困っているのに誰も助けてくれない。
幸いなことに売場には他のお客様があまり居なかったことで、数子さんは女性客を助ける時間を取ることが出来た。
女性客は数子さんに頭を下げてお礼を言ってお店を後にした。
後日、数子さんは上司にこういう問題が起きたことを報告した。
ところが。
上司は「そうなんだ、まぁそういうこともある」という軽い反応だった。
数子さんはがっかりしてしまった。
お客様から助けを求められたのに、パート仲間が誰も助けてくれなかったこと。
上司の対応がそっけなかったこと。
絶望した数子さんは実家に戻って家族にパート先の話をしたのだが、実家の家族は「世の中そういうもんだ」という冷たい反応だった。
転職したいと家族に言っても「どこ行っても変な人はいるから無駄」と馬鹿にされてしまった。
数子さんはパート先だけじゃなくて家族ですら敵なのかもしれないと悟った。
ドキドキした