私にだけ見えない藁人形
投稿者:gray (9)
小学校の時の話です。怖い話ではなくなんとなく不思議、という程度の体験です。
私の通っていた小学校は新設された新校舎と、古い旧校舎がありました。
新校舎を建てる際、旧校舎は完全に壊さず、一部だけを残して、新校舎と旧校舎の間に連絡通路を作り2階部分が繋がっていました。
そのため、まだきれいな新校舎の2階の端にある職員室の方まで行き、そのさらに奥にある連絡通路を行くといきなり古い旧校舎に入るという作りでした。
旧校舎は1階にも入り口はありましたが、なぜかそこは封鎖されていて、新校舎とつながる連絡通路からしか入れません。
旧校舎に入ると、まず正面に音楽室があり、隣に木琴などの大きな楽器をしまっておく部屋がありました。
さらに1階に降りる階段があり、その階段を降りていくと理科室、色々な道具などを保管している理科準備室、さらには社会科準備室がありました。
旧校舎はかなり古く、冷暖房などの設備はありません。
2階の音楽室は特に問題なかったのですが、1階の理科室は夏場は不思議とあまり暑くないのに対し冬になると隙間風が入ってきて寒いので、理科の授業で移動する際には、上着を持って行っていいことになっていました。
理科室の床は柱に支えられている以外は空洞になっているようで、床に3センチくらいの隙間ができているところがあって、そこから50センチくらい下に地面が見えていました。
床下は当然暗いので、理科室を照らす電気で薄っすら見えるだけです。
どこの学校もだいたいそうだと思いますが、学校の授業で数組に分かれてグループを作ることがありますよね。
この理科室には、下部が収納棚になっている大きな机が6個、教壇側から見て縦に2列、横に3列という形で設置されており、授業の際には5、6人ずつに分かれてその机に座りグループを作っていました。
件の床の穴は、教壇側から見て一番右奥の机のところにありました。
その机の1人の生徒の足元に、ちょうど穴があるような形になります。
授業中、退屈でなんとなくその穴を眺めたり、消しゴムのカスを落として足を使って入れてみたりといったことを、その席に座った多くの生徒が体験していたことでしょう。
私も席替えの関係でその席に座ったことがあり、この隙間を塞いでくれたら少しは寒くなくなるだろうに、などと考えたことがあります。
それに、足元に薄暗い穴があるというのは、なんとなく不気味でもありました。
さて、私が4年生くらいの時のことだったと思います。
理科の授業が終わりみんなで片づけをしていた時のことです。
件の穴がある場所に座っていたとある男子生徒が、突然「あっ!」と大きな声を出しました。
クラスではわりとお調子者タイプのその子が大きな声を出したので、どうしたどうした、とみんな注目しました。
「穴の中に藁人形がある!」とその子は言いました。
日本人なら、大抵の人は藁人形を知っていることと思います。
怪談話でよく出てくる、人を呪うために使われる藁でできた人型の人形です。
それが理科室の穴の下に落ちているというのです。
小学生というのは、怖い話が好きな子が多い年ごろです。
学校の図書室にも、小学生向けの怖い話などがたくさんありましたし、私たちの世代では怖い話のブームだったのか、夜の7時台に『木曜の怪談』という滝沢秀明などが出演していた子ども向けホラードラマがありました。
当然ながら、藁人形という言葉を聞いて、みんながその穴にむらがりました。
穴をのぞき込んで、みんなは次々に「本当だ!」「藁人形がある!」と興奮気味でした。
不思議な話ですね
心が綺麗な人には藁人形が見えなかったのかもしれませんよ