真夜中の山道に現れた有り得ない車の行列
投稿者:空穂 (6)
これは友人のAが、十年ほど前に実際に体験した話だ。
当時Aは、大学進学のために県外で一人暮らしをしていた。
友人や彼氏もできて毎日楽しく、またバイトにサークルにと忙しく過ごしていたが、彼女はなぜか、休みになるたびにせっせと地元へ帰省していた。
Aの地元はそう近くもないので、どうしてそんなに頻繁に帰るのか聞いてみた。
すると、Aのお爺さんが入院していて、そのお見舞いに行っているのだという。
お爺さんは高齢で、長い間施設に入っていたのだが、ついに施設ではお世話ができないくらいに身体が弱ったことから、前年に病院へ移ったそうだ。
だんだんと食べる力もなくなっていて、いつどうなるかわからない状態だという。
Aは小さい頃、両親の仕事の都合でお爺さんの家に預けられていたこともあるらしく、大きくなってからも大変なお爺ちゃん子だった。
そんな大好きなお爺さんが、もうすぐ亡くなるかもしれない。Aはお爺さんと話ができるうちにたくさん会っておきたいと思い、長距離も厭わずにお爺さんに会いに帰っていたのだ。
それを聞いて、Aはいい子だなあと思ったのを覚えている。
ある夜のことだ。
Aが居酒屋のバイトを終えて帰宅している途中、突然携帯が鳴った。出てみると母親からだ。こんな時間にどうしたのかと尋ねると、母親は涙ぐんだ声で、「お爺ちゃん、容体が急変して、今日明日が峠みたい」と言う。
前々から覚悟をしていたことだが、いざその時がくるとAはたまらなくなった。母親に「すぐ帰る」と伝えると、Aは急いで帰省する準備に取り掛かった。
幸いにも、翌日は休みだった。Aは最低限の荷物だけを持つと、家を飛び出した。
深夜だったので、公共交通機関はもう動いていない。
Aは大学生だったが自分の車を持っていたため、思い切って車で帰省することにした。
地元までは高速を使えば3時間ほどで着く。
Aは夢中になって夜中の高速を飛ばした。
インターを降りると、Aは考えた。街中を通った方が新しくて大きい綺麗な道だが、山の中の旧道を越えた方が、病院までは近道だ。
今は一刻を争うときなので、Aは旧道を通ることにした。
旧道を自分で運転したことはなかったが、新しい道路ができる前は、親の車で何度も通ったことのある道だ。ナビもあるし大丈夫だろう、とAは考えた。
旧道に差し掛かった頃、時刻は夜中の二時を過ぎていた。真っ暗な山道で、対向車が来るとスレスレになる程狭い。
しばらく走っていると、一台の車が前を走っているのに気がついた。
Aはスピードを落としたが、それでもあっという間にその車に追いついてしまった。
シルバーのフィットで、ごく普通の車に見えたという。
Aは、こんな夜中でも走っている車はいるんだな……と思い、そのフィットの後ろについて走った。
しかし、Aはすぐに妙なことに気がついた。
前を走る車のスピードが、異常に遅いのだ。
夜の山道だからというには奇妙なほど、ノロノロと走っている。その速さはもはや徐行レベルだったそうだ。
Aは少しでも早くお爺さんの元へ駆けつけたかったので、正直とてもイライラしてしまった。
しかし、追い抜きたくとも道は暗くて狭いし、一車線しかない。何かあったらという危険を考えると、もどかしいがこの車の後ろをついて走るしかなかった。
凄く面白かった!
おじいちゃん、実は連れて行こうとしてたとかだったら怖いな
想像したら怖すぎる
死者の渋滞はAにお別れをする為に時間稼ぎをした爺ちゃんが引き起こした。
最期、間に合ってればそういう解釈も出来るけど間に合ってへん。
どうも腑に落ちない話。でも、これこそが「実話」の醍醐味。