鏡の中の赤いお姉さん
投稿者:空穂 (6)
友人のMが体験した実話だ。
ある年の正月、Mが実家に帰省すると、同じタイミングで兄夫婦も帰ってきていた。
兄夫婦にはまだ小学校低学年の甥っ子と幼稚園児の姪っ子が1人ずついる。
2人とも冬休みでテンションはマックス。それはそれは賑やかだったらしい。
特に甥っ子は遊び盛り。大人の背中に飛びついたり、あたりを走り回ったりとやんちゃそのもの。
そのため、大人たちはみんな甥っ子の相手をするのでいっぱいいっぱいになっていた。
そんな時、ふと気がつくと、姪っ子のあーちゃんの姿がない。
あれ?あーちゃん?と呼びながら広くはない実家の中を探す。
すると、Mの母親(姪っ子からすると祖母)の私室から、ボソボソと声が聞こえる。
Mは「こんなところにいたの?」と声をかけながら、ひょいっと中を覗いた。
電気もついていない薄暗い部屋の中で、姪っ子はひとり、三面鏡に向かって何かをブツブツと呟いていた。
「……あーちゃん、いっしょだねー、これでね、おんなしねー……」
「あーちゃん……?何してるの……?」
恐る恐る声をかけると、あーちゃんがぐるっと振り返った。その顔を見て、Mはさらにギョッとした。
あーちゃんの両目が異様に大きく真っ黒になり、口は耳まで裂けたように真っ赤に開いている。
「あーちゃん!」
Mが思わず悲鳴をあげると、姪っ子が不思議そうな声で「Mちゃん?」と呼んだ。
よく見ると、いつものあーちゃんの顔だった。
しかし、あーちゃんは祖母の口紅を勝手に持ち出したのか、口の周りにぐるぐると塗りたくっている。
「何してるの!それ、おばあちゃんのだよ!」
慌ててMが駆け寄ると、あーちゃんはキョトンとしている。
「遊んじゃったの?あーちゃん、おばあちゃんにごめんなさいしないとダメだよ」
「ちがうよー、あそんでないよ」
と、あーちゃん。
「赤いお姉さんがねー、いたからね、あーちゃんもおんなしにしてっていうから、してあげてたんだよー」
……は?
Mは一瞬、姪っ子が何を言っているのか理解できなかった。
あーちゃんは無邪気に笑いながら言った。
「かがみの中からねー、赤いお姉さんがでてきてね、あーちゃんがかわいいから、おんなしにしてあげるって言うの。だから、ぬってたの!」
「赤いお姉さん……?って何……?」
「あのね、おめめがまっくろくろすけでね、お口がこーんなに大きくて赤いお姉さんだよ」
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