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妖怪・風習・伝奇

Tochikaさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

最後の境界線
短編 2026/05/27 19:32 181view

一週間くらい前になるんだけど、その時の俺はかわいい彼女が欲しくて欲しくてたまらなかった。

そんな時、買い物に行った帰りにちょっとボロい神社を見つけた。
よく通る道なのに、全然知らなかった。

ただの気まぐれに参拝して、ほんの気まぐれでポケットに入れてた小銭を賽銭箱に投げ込んだ。
そして「貧乏神でも疫病神でもいいから、優しくてかわいい彼女ができますように」ってお願いしてきた。

そのあとは普通に家に帰った。
俺の家は安アパートで、サビだらけの階段を上がってすぐの部屋だ。
誰かが階段を上るとガンガン音が響く部屋だから、他の部屋よりちょっとだけ安かった。

部屋に入って一息つく暇もなくドアがノックされた。
階段の音なんて聞こえなかったから、同じ階の人かなと思ってドアを開けたら、めちゃくちゃかわいい女の子が微笑んでた。

ショートボブでちょっとつり目。
小柄だけどメリハリのあるボディラインで、正直、めちゃくちゃ好みのタイプだった。

「初めまして、死神です」って朗らかに言って勝手に部屋に上がり込んできた。

話を聞くと、俺が神社で願い事をしたから来たらしい。
「貧乏神でも疫病神でもいいなら、わたしでもいいですよね?」と上目遣いで俺を見てきた。
その流れで「彼女になりにきました」って言ってきたけど、丁重にお断りした。
そのあともかわいらしく誘惑してきたけど、この一線だけは譲れなかった。

だってさ、貧乏神で貧乏になる、疫病神で災難や病に見舞われるのは我慢できる。
でも、死神は”死”だからな。
我慢とかそういうレベルじゃない。

そんな言い分にも「人間、いつかは死ぬじゃないですか」とか笑って言い返してきた。
「死ぬのと殺されるのは違う」と言ってやったが、「そうかな?」とかわいらしく首を傾げてた。

「わたし、こう見えて優秀なんですよ」「彼女になったら何でもしてあげますよ」なんて言われたけど、死のリスクがチラついて頑なに断った。

そんなこんなで揉めてたら、けたたましく階段を駆け上がる音に続いてドアがノックされた。
嫌な予感がしたけど――そんなことはなく、俺の友人だった。

いい奴ではあるけど、女にはだらしない奴だ。
そんな奴だから、死神を見ると興味を示してた。
俺の彼女じゃないことを確認すると「いい所があるから遊びに行こうよ、今から」とか猛アタックしてた。

彼女はちらりと俺を見て、また目線を友人に戻した。
「彼女になっていいなら行きますよ」
友人に向けられた笑顔を見て、甘えるような声を聞いて、俺の胸に痛みが走った。

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