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ヒトコワ

沈丁花さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

積もり積もった痛みの果てに(加筆修正版)
長編 2025/09/05 11:36 4,835view
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【副題:本当に恐ろしいのは(第三章)】

※いじめと児童虐待の描写あり

 身バレを防ぐために、多少フェイクが入っています。

 
 俺は中部地方の田舎の生まれだ。俺は小中学生の頃、ひどいいじめを受けていた。同学年だけではなく、名前も知らない上級生や下級生にまで意地悪をされ、汚らしいものとして扱われていた。担任に泣きながらいじめのひどさを訴えても、
「あなたも口が悪い。人の悪口を言わない。喧嘩をしないの。」
と言われ、まともに聴いてもらえなかった。両親も俺の哀しく、痛ましい心の叫びに耳を傾けようとしなかった。

 

 
 3年生の頃に仲が良かった子も、夏休みが終わったあとに県外の小学校に転校してしまった。唯一残った友であるNさんまで敵側にまわってしまい、俺はとうとう孤立無援に陥った。が、浸水した洞窟の中でなんとか顔だけを出して息をしているような境遇の俺に、温かな色の光を当ててくれた新たな友人が現れた。そいつの名前をXとしよう。

 なぜ、友達を「そいつ」と呼び、その仮名を”X”にしたかと言うと、そいつがとんでもないフレネミーだったからだ。そんな人面獣心の輩の汚い名前など頭文字にもしたくなかったから、Xにしたのだ。

 

 Xは母親と兄弟達と一緒に、俺の家からそう遠くないところに引っ越してきた。勉強面では普通だったが、たいへんな美形でスポーツがよくできるXは当初は俺の大切な友人だった。だが、Xはすぐに優しい友の仮面を脱いだ。

 フレネミーがよくやることだが、

 「クラスの▷▷ちゃんが、〇〇くん(俺)のことを『デブで不細工で、まぬけの胴長短足』と言ってたよ。」
と、プライベートで会うたびに伝えてくるようになった。

 Xはまもなく俺が極度の怖がりであることを見抜き、共通の知人であるQと共謀して、俺に嫌がらせを始めた。例えば、二人で何度も俺の家にイタズラ電話をしてきたり、嘘をついて俺をクラスの笑いものにするのは日常茶飯事だった。のちに一部は取り戻せたが、大切な文房具類や天然石のコレクションを盗まれた時には流石にはらわたが煮え返った。

 

 何よりも屈辱的で、悔しくて、今でも許せないことが、Xの家の駐車場で裸にされたことだった。それは木枯らしが吹き荒れる、肌寒い日だった。この時俺は【次の段落の言葉】で脅され、無理に野球拳をさせられ、服を脱がされたのだーーそれもXに無理やりパンツまで下ろされた!Xの家は道路沿いにあり、その左斜めには病院の駐車場が見えた。そこに通う患者さんの何人かに、遠目ながら俺はみっともない姿を見られ、Xを怒鳴りつけて逃げ出した。補足すると、その時はXの他にXの友達もいたが、彼女たちはジャンケンで負けてもセーターを脱ぎ、せいぜい長袖シャツとズボン姿になる程度だった。

 
 さらに、Xの母親は占いを生業にしている女性に悩み相談をしているらしかった。Xとその兄弟もその占い師さんと面識があるらしく、Xはそのことを自慢に思っているようだった。その影響を受けてか、Xは自分の好き嫌いでクラスメイト達を悪魔やら天使やらに分類していた。もちろんXは大天使であり、俺の友達だったNさんは悪魔にされていた。俺は例外的に天使と悪魔の融合体とされた。また”△△兄ちゃん”や”呪術師の××先生”という架空の人物を作り上げ、そいつらの話をするために俺の時間をふんだんに奪った。
【あたしに逆らうと、あんたの背中の悪魔の羽根が伸びるよ。呪われるよ。クラスの皆に言いふらすよ。】
と、いつものように俺を怖がらせて。

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コメント(5)
  • 花蘇芳(沈丁花)です。Xにされたことを付け加えました。あまりにひどい内容だったので、これまで記憶の奥深くに沈めていました。Xがいかに常軌を逸した子どもだったのかをもっと書きたいと思い、勇気を出して加筆しました。これまで読んでいただいた731名の皆さま、大変申し訳ありませんでした。いつも謝ってばかりですみません。ごめんなさい。

    2025/09/06/13:40
  • 花蘇芳(沈丁花)です。一部、文のつながりが分かりにくい箇所がありましたので、訂正しました。Xと対峙する覚悟を決められたのは、決して自分の怒りの力だけではなかったので、もっと詳細に描写しました。

    2025/09/07/00:47
  • Xマジで処刑どころか地獄行きだろABCDEFとかも

    2025/09/21/15:53
  • 花蘇芳(沈丁花)です。コメントありがとうございます。Xには放課後さんざんにまつわりつかれましたが、「学校では話しかけないで」と言われていました。XやQ、他のいじめっ子たちにされたことを全て書いていたらただの愚痴になってしまうので、特にひどかったことだけを書きました。あまりに悪質すぎて、書けなかったこともあります。この作品で「本当に恐ろしいのは生きた人間の所業である」であることを伝えたかったのですが、ストレートに言いますと。不完全燃焼感が残りました。

    2025/09/26/11:02
  • 花蘇芳(沈丁花)です。一部、加筆をしました。

    2025/10/24/10:59

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