センスって言葉が嫌いなんだよなー。
だってそんなのその人の主観じゃん。その人がいいって思うかよくないって思うかだけの話だし。
あと多数決じゃん。世の中でより多くの人に選ばれてるのが「センスがいい」って言われるみたいな。
だからセンスがいいとか悪いとかいう人って頭悪そうだなって思ってしまう。
別にあたしがセンスいいって褒められたことがないから僻んでるんじゃなくて、単純になんか嫌な言葉だよなーって思うだけ。
むしろセンスって言葉を使う奴がセンスないよなって。
たしかに私にはセンスはないのかもしれないけど、霊感みたいなものはあるらしくて、うちの近所にあるバス停のベンチにいつも座ってる幽霊が最近気になっている。
いかにも女子大生みたいな、小柄でサラサラロングヘアにチャコールグレーのワンピースを着ている可愛らしいオーラ全開の女の子なんだけど、見るたびに泣いているのだ。
可愛い子は泣いてるだけで絵になるよなーって思いながらチラ見しているだけのあたしに優しさなんてものは備わっていないみたいで、こりゃセンスだけじゃなくて思いやりとかもないんだなって思うとちょっと恥ずかしくもなってくるけど、ある雨の日、あたしはその子に話しかけることになった。
そのベンチは屋根の下にあって、突然の夕立から逃れるように避難してきたあたしは、泣いている幽霊の女子大生と2人きりになって気まずさを覚える。しかも結構な至近距離だし。
で、まあなんか黙ってるのもあれかなーみたいな感じで「あの、なにかあったんですか?」って訊いてみる。
あ、でもこっちの声って聞こえるのかな? いやまあ幽霊とコミュニケーション取ったこともないからわからないけど、でもまあ怪談話とかだと幽霊と話してる人もいるみたいだし、話すことくらいはできるか。
って思いながらリアクションを待つんだけど、両手に顔を埋めたまま、その幽霊は動かなくなってしまう。
うわー、もしかして人見知りな子だったのかな。失敗したか。ていうか別にあたしだって人付き合いとか苦手だから人のこと言えないんだけど。
「……実は私、殺されちゃって」ってその子は顔を上げずに言う。
うわっびっくりしたっていうのをなるべく顔に出さないように気をつけたけど、でもそう言われてもなんて言葉を返したらいいんだろ。
大変でしたねとか残念ですねみたいなのってちょっと違うよな。
「……あー、災難でしたね」
……いいのか? これで。残念とかとおんなじようなもんじゃん。
「どうしても、どうしても、哀しくて、悔しくて、どうしようもないんです」
「あーまあ、それは……そうですか」
コミュ力が低すぎるあたしは、うまく相槌が打てない。ただでさえ愚痴とか聞くの苦手なのに、殺されて哀しいですって言われても、ベストの返答がわからん。
「どうしたらいいと思いますか?」って、初めてその子は顔を上げるんだけど、かなり可愛い。雰囲気だけじゃなくて、顔が可愛い。うおー可愛いーっていうのももちろん顔には出さないし、お悔やみを申し上げる感じの厳か?な表情を心がけながら「うーん、どうでしょうね」ってはぐらかす感じであたしは考えてるふりをする。
だってどうしたらもこうしたらもないでしょ。
殺されたのが哀しくても、もう死んじゃってるんだから、成仏するしかないんじゃないの? っていうのはあたしが殺された経験がないから言えることでしかなくて、実際殺されたらやっぱこういうふうに地縛霊みたいになっちゃうんだろうなぁとか思いつつ、ちょっと気になることを訊いてみる。
「あの、ここで殺されちゃったんですか?」
死んだ場所に縛られるみたいなのってよく聞くけど、でも思いが強い場所から離れられなくなるパターンもあるだろうし、この子のケースではどうなんだろって思ったんだ。
「はい。ここでバスを待ってたら、いきなり男の人が襲ってきたんです。腕とか首とかお腹とか30回くらい刺されて、凄く痛い!って思っていたら私、死んじゃってました」
あらら、通り魔に刺されたのか。それは遣る瀬無いよなー。
怨恨ならまだ納得できるかもだけど、知らない相手にいきなり殺されるとか、そりゃ成仏だってできるわけないか。
























私は女性だけど、美少女の霊さんにはちょっとドキドキしました。