奇々怪々 お知らせ

不思議体験

入月麗奈さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

復讐の果てに
長編 2025/08/22 21:18 3,351view
1

「犯人は捕まってるんですかね」
「いいえ。まだ逃走中みたいです」
「え、なんで知ってるんですか?」
「ここのバス停の事件だから、ここを利用してる人たちがたまに話してるんです。まだ犯人捕まってないらしいよって言ってました」

なるほどなー。犯人が法律で裁かれるでもなく、のうのうと生きてることを考えたらやっぱしんどいよな。
でもあたしにできることはないし、その後は適当に話を合わせながら雨が上がったタイミングでさよならする。

その後も何度か可哀想な幽霊少女と邂逅して会話を重ねていく。
もちろん周囲に人がいないとき限定だし、時間は昼夜問わないけれど、たいてい真っ昼間だったかな。

やっぱりいつも泣いているんだけど、あたしに気づくと軽く会釈をして、笑顔は見せないんだけどなんかちょっとだけ安堵してるというか、嬉しそうな感じの雰囲気で生前のことを色々教えてくれる。

父親のみの片親育ちで一人っ子だったとか、寒がりだから冬が嫌いだとか、小学生の頃授業中におしっこを漏らしたこととか、喉元に三角形の感じでほくろがあることとか、付き合う男性はみんなダメ男ばかりとか、訊いてもいないのに、なんかそういう話を自らしてきたのは、多分寂しかったんだろうな。

短い生涯ながら、人生を振り返れば結構ツイてない人生だったみたいで、とにかくタイミングが悪いことばかりだったらしい。
よりによって〜みたいな経験が多過ぎて、もうとにかく自分が嫌になることばかりと嘆いているんだけど、結構自業自得というか、単純にそれ自分のせいじゃない?ってことも多くて、特にいつも彼氏に振り回されるみたいなのは男を見る目がなさすぎるとしか思えない。

話を聞く限り、頭の悪そうな男とか素行の悪そうな男とかそんなのばっかりで、なんかもっとちゃんと選べよなって説教しそうになる気持ちをグッと堪えながら相槌を打つあたし。

ていうか、審美眼みたいなのをもっと磨いたほうがいいでしょ。
死んじゃってるから今更過ぎる話だけどさ。
駄目男に惹かれる自分が好きなだけなんじゃないのこの子。
ま、あたしには関係ないけどね。

そんな感じでなんとなく仲良くなりだしたある日、事態は急展開を見せる。
それはあたしたちが出会ったちょうど一週間後だった。

犯人の男がバス停に現れたのだ。

そのときもやっぱり益体のない話を聞かされていて、失恋したらどうやって立ち直るかみたいなガールズトークの真っ最中だったんだけど、いきなり幽霊少女は「あ!」って口をあんぐりさせながら、バス停の標識っていうかポールのとこに立っている男性を指差す。

「なに?」
「あれ、あの人です。私を殺したの」

え? え? なんでこんなとこに普通にいるの?
って疑問をあたしは表情だけで訊くんだけど、知るわけないよな。

「……」

突然すっくと立ち上がって、幽霊少女はゆらりゆらりとその男に向かって歩き出す。

「え、え、ちょっと、幽霊ちゃん、どうするの?」

てっきりこの場から一ミリも離れられないのかと思っていたけれど、普通に移動できるんだとかどうでもいいことを考えてる間に、どこに隠し持っていたのか、幽霊少女は手に持ったナイフを男に振り下ろした。

ザシュ!みたいな音はなくて、聞こえるのは男の悲鳴だけだった。

2/3
コメント(1)
  • 私は女性だけど、美少女の霊さんにはちょっとドキドキしました。

    2025/08/24/08:36

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。