お母さんはいつも僕と遊んでくれる。
お父さんがいないから、お母さんは仕事をして、家のこともしなくちゃいけないのに、僕が「遊ぼ」と言うと、「いいよ」と言って遊んでくれる。
僕はとても寂しがり屋で、保育園に通っていた頃から一人ぼっちは苦手だった。
保母さんに僕を預け、「お母さん、お仕事頑張ってくるね」と僕の頭を撫でるお母さんの足にしがみついて、「行っちゃやだ!」と泣きわめいていた。
さすがに今ではそんなことはしないけれど、でも今でもお母さんが大好きだし、お母さんとずっと一緒にいられたらいいなと毎日思っている。
お母さんは綺麗なのに、最近は全然お化粧もしなくなっちゃった。おんなじ服ばっかり着てるし、美容院にも行ってない。
でもそんなお母さんもボクは大好きなんだ。
ある日、「かくれんぼしよう」とお母さんから提案された。
いつもは僕から遊びに誘うのに、なんだか珍しいなと僕は首を傾げてみるけれど、遊んでくれるのは嬉しいし、僕には断る理由なんてどこにもないのだから、「うん!」と大きな声で返事をしてから、さっそく隠れる場所を探す。
でも、うちは古いアパートで二部屋しかないし、隠れられそうなところなんてなかなか思い浮かばない。
「あ!」と僕はひらめいた。
主に寝室として使っている方の部屋は、僕の漫画とかでいつもゴチャゴチャと散らかっているので、その本の中に隠れようと考えたのだ。
僕は自分の頭の良さに、思わず笑ってしまう。
「いーち、にーい、さーん」
お母さんが数えだした。
急いで隠れなきゃ。
僕は隣の部屋へドタドタと走っていき、バサバサと本とか雑誌とかをどかしてから空いたスペースに横たわり、今度は自分の身体に本を乗っけていく。
漫画本は面積が小さいから、たくさん乗せないと僕の身体を隠せない。
なので、部屋にあった紙媒体のものを片っ端から乗せる。
小説だったり、プリントアウトされた求人情報の用紙だったり、施設入所案内のパンフレットだったり――。
……よーし、これだけ乗せれば大丈夫だ。
早くお母さん来ないかなー。
キョロキョロしながら僕を探すお母さんの姿を想像するだけでニヤけてくるぞ。
要領の良い僕は、全身を本で覆いながらもちゃんと視界の隙間を空けておく。
ここからは隣の部屋で数えているお母さんの後ろ姿が見える。
「……きゅーう、じゅう!」
ドキドキ。
「もーいいかい?」
僕はうっかり返事をしてしまわないように口を塞ぐ。

























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。