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妖怪・風習・伝奇

HiTsUZI1029さんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

正義感の強さがもたらした最悪
短編 2025/07/31 13:37 1,883view

熊の出る某県。
そこに正義感が人一倍凄い青年がいた。
それは雪が降ると藁で作った藁靴、「かんじき」みたいな防寒装備を身に着けていた時代。

その人物は、とにかく、「悪事」を働くものを嫌った。だがそれはいつかやりすぎてしまうこともある。
ある時はいじめ行為を行う同級生に「制裁」といい「拳」を振りかざした。
またある時は路上で子供の暴力を振る父親のことを投げ飛ばすこともした。

これらができたのも、今で言う「高校生」ながら180cmの巨体と生まれつきの力を持っていたからだろう。その力は彼に様々な武道で勝利をもたらした。当時にしては珍しい巨体で、正しく「武に愛された」青年だった。

そんな青年が冬祭りのある日、泣く少女を連れて山に入っていく男を目撃する。

小さな町ながらもイベントには力を込めているこの町では、よく他所から来た者がこのような事件を起こす。昨年も同じ事があり、事に至る前に青年含む治安維持の町民らが犯人を取りおさせた。いくら警戒していても注意する人間が少ない現状予防することは難しい。

今回のその男は40代ほどで小太りしていて、冬だとは思えないほどの軽装だった。

青年は少し離れた位置から尾行することにした。
勘違いだったら酷いからだ。

5分程歩くと、森の中の小さな公園…というより椅子とそれを守るようにして囲う東屋だけの小さな「スペース」着いた。
ここは、青年にとっても思いのある場所で、実は小さい頃によく来ていたのだ。小さい子供が泣き止まなかったとき、たま子供を寝かせつけたかったときなどに、この場所は町民によって利用されてきた。
何を隠そうこの青年も、このベンチには世話になった。
森を入って少し歩いたところにあるこのスペースは木が避けるようになっていて、味わい深い漆黒の椅子は毎年町民によって掃除され、椅子を雨風から防ぐ古びた東屋を見ていると涙が出る。

案の定、この「親子」もこの場所で寄り添うようにして寝た。
男性は少女を寝かせると、自分は周りを警戒してから睡眠に入った。
子守に疲れていたのだろう。

そして青年がホッとして森を去ろうとしたときのことだった。

「キャアア」とか弱い悲鳴が聞こえ、すぐ消えた。
嫌な予感がした青年は走って椅子へ向かう。

そこには男性と少女の姿はなかった。
そして、あの椅子にはまるでバケツをひっくり返したかのような「血」がドバッと、降り掛かっていた。

所々に肉片も散らかるその様に、人の仕業ではないと悟る。
近くから
〚コフー〛
という不気味な鼻息が聞こえる。

完全に理解した。
これはくまの仕業だ。

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