さすがの青年もくまには勝てない。狩られる側になった動物はすぐに逃げ出す。青年もそうだった。
普段どれだけ言われていたとしても、その忠告がいざというときに役に立つのは、最悪の状況が終わるか、一段落ついたときだ。
気がつくと、青年は冬祭りの会場まで来ていた。
【これはまずい】
そう思ったのもつかの間、くまの野太い爪は青年の背中を脊髄にそって引き裂き、その猛威はまつりを楽しむ町民達へ向いた。
結局、酷い死傷者が出た。
その町も冬祭りももうない。そして、青年ももういない。
今回のくまの騒動…原因はあの男性とともにいた「少女」がきのこ狩りで山に入ったとき、もっこりした土山を見つけ、それを掘り起こしたことだ。土山の中身はくまの溜め込んでいた「食料」だった。
その中に猟師の燻製肉があったことが、少女の興味をわき立てたのだろう。少女は、それを家に持ち帰ってしまった。
泣いていたのは、父親にそのことで叱られたからだ。
町も町人ももういないが、椅子と東屋はまだ残っているだろう。
それらはもう整備されていないのでぼろぼろだが、いまだに、黒い木の板とそれを支える野太い丸太は残っている。
前のページ
2/2
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 9票























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。