奇々怪々 お知らせ

不思議体験

どこかで見た話さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

禁止事項
短編 2025/07/11 10:00 1,951view

大学を出て、俺は教師になった。
正直なところ、教育に熱意があったわけじゃない。ただ、子供と接していると、どこか自分が「過去から抜け出せていない」気がして、落ち着いた。

赴任先は、郊外の少し寂れた町にある小学校だった。
赴任初日、校庭を案内されていたときのことだ。

「ここが体育倉庫です。生徒にはあまり近寄らせないようにしてまして…ちょっと老朽化してて」

教頭がそう言って指さした場所に、俺は目を疑った。

――体育倉庫の裏。
その奥に、あったんだ。

白線。

かすれてる。地面にしみこんだみたいな線が、校庭の端から延びてる。

おかしい。ここは昔通ってた小学校じゃない。まったく別の町、別の校舎だ。

「……あの線、なんですか?」

何気なく聞いたつもりだった。だが教頭は、一瞬だけ口をつぐみ、こう言った。

「……ああ。あれね、たまにあるんですよ、こういうの」

意味のない答えだった。
でも、俺はその日から、放課後に無意識にその白線を見に行くようになった。

そして数日後、ある生徒が近づいているのを見た。

グレーのジャージを着た、痩せた子だった。
名前を呼ぼうとして、言葉が出なかった。
喉の奥が、妙に乾いていた。

その子が、白線を見ていた。
そして、俺の方を振り返って、言った。

「先生。これ、見たことあるでしょ」

俺は、一歩だけ近づいた。

「君の名前は?」

「……忘れたんですか?」

その瞬間、頭の奥で警報のような音が鳴った。
「思い出してはいけない」と、本能が叫んでいた。

グレーのジャージ。笑い方。背格好。あの頃と、まったく同じだった。

その子が、ポケットから何かを取り出した。
白黒の、ぐしゃぐしゃに塗り潰された写真だった。
その中央に、俺の顔が――うっすらと見えていた。

1/2
コメント(1)
  • はあ?

    2025/07/11/10:31

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。