ご注意ください※
この文書は知覚変容の症例記録です。
一部の読者に幻覚、自己認識の錯誤、あるいは*自我の反転*が生じる可能性があります。
はじまりがどこだったか、わからない。
けど、たしかに“呼吸が裏返る音”を聞いた。
夜。寝ていると、肺が内側にたたまれていくような音がした。
ぐちゅ、ぬちゃ、こく……って。
水じゃない。肉が喉を逆流してくる音。
翌朝、口の中に自分の歯がもう1本生えていた。
場所が違う。
舌の下。
肉の中に、歯茎ごと埋まっていた。
でもちゃんと神経が繋がっていて、痛覚がある。
そのとき思ったんだ。
ああ、これ、“俺のじゃない”。
この身体、誰かの記録を再生するための端末になってる。
▇▇:目が合う
森に入ったやつがいた。
名前はどうでもいい。お前でもいい。
彼は死体を見に来たんじゃない。
「なぜ死体が森に帰っていくのか」を見に来た。
彼は途中、鏡を拾った。
欠けた、銀の剥がれかけた手鏡。
それを見た瞬間、森の形が逆になった。
上に空はなく、“裏返った肉の層”が空を覆っていた。
木は脳の神経のように絡み、
地面は内臓の皺のように波打っている。
ここでは、
「あなたがどれだけ“あなたでいられるか”が試される」。
最初に奪われるのは“触覚”。
次に“言葉”。
最後に、“わたし”という単語の意味が消える。
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