ある地方都市の交差点に、「赤にならない信号機」があるという噂があった。昼間は普通の信号だが、深夜2時を過ぎると、青と黄だけが繰り返され、決して赤にならないという。
噂を聞いた大学生のAとBは、肝試し半分でそこに行ってみることにした。時刻は午前1時55分。交差点の近くには人も車もおらず、不気味な静けさが漂っていた。
2人はスマホで撮影しながら待った。やがて2時を回ると、本当に信号の色が青→黄→青と繰り返し始めた。赤は一度も点灯しない。
「マジかよ…ほんとに噂通りじゃん」
「ヤバいな…でも、なんで赤にならないんだろ?」
その時、Aのスマホに着信があった。非通知だったが、好奇心で出てみると、雑音交じりの声がこう囁いた。
「……赤がついたら、渡っちゃいけない……赤がついたら、戻れなくなる……」
突然、信号が「赤」に変わった。
「うわ、今の声なんだよ!?」
「赤ついた…戻れなくなるって、どういう意味だよ……?」
その瞬間、信号の向こうに、真っ赤な防災頭巾を被った集団が無言で横断歩道に立ち並んでいるのが見えた。まるで昭和時代の避難訓練のような格好で、顔は影に隠れて見えない。
2人は震えながらその場を離れようとしたが、足が交差点の白線に吸い寄せられるように勝手に前に出てしまう。Bが叫ぶ。
「やばい!足が勝手に…渡るなって言ってたのに!」
そのとき、2人の後ろから車のクラクションが鳴り響いた。その瞬間、すべてが元に戻っていた。信号は青、道路には誰もいない。
息を切らしていたAとBは、慌ててその場を離れた。
後日、Aが市の交通課に問い合わせたところ、「その信号は50年以上前に事故で子供が亡くなった場所」で、事故当時は赤が壊れていて、信号無視した車に轢かれたのだという。
それ以降、毎年命日には深夜に赤が灯り、亡くなった子供たちの霊が渡ろうとするという話が、地元では囁かれていた。























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