私には教師として働く兄がいました。
兄は寝室、キッチン、リビングルームのある古風なアパートを美術室として借りていました。
しかし、暮らすためではなく、絵を描くためだけのものです。
折角借りているのに住まないなんてもったいない!
そこで「私に部屋を貸して一人暮らしさせてよ」と頼みました。
兄は快く引き受けてくれました。
一人暮らしの初日。 わくわくしてアトリエに戻りました。
兄から「戸締りに気を付けてね」と言われ、帰ってくるとすぐにチェーンで玄関の鍵を閉めました。
それから夕食を作り、本を読み、初めての一人暮らしを満喫しました。
気が付くともう真夜中でした。 戸締りやガスの元栓などを再確認し、それから寝ました。
しばらくして、午前2時から3時頃、玄関のドアが開く音が聞こえました。
兄が絵を描きに来たかなと思いました。
こんな時間、、、まさにワーカホリックだな。ウトウトしながらと思うと私が寝ている部屋の隣の部屋に入りました。
隣の部屋は画材やキャンバスなどを保管する部屋です。
兄が一人でつぶやいたり笑ったりしていました。
「やっぱり芸術家と怪しい人って紙一重だよな」
と思いながらいつのまにか寝ていました。
朝、目が覚めると兄がいなかった。 帰ってしまったのではないかと思います。
私は兄の絵を描く情熱を尊敬するようになりました。 そしてアパートを出る準備をしました。
玄関を開けようとしたときに、突然恐怖に襲われました。
それ以来、私は二度とその美術室に足を踏み入れることはありませんでした。
だって、チェーンを使って戸締りをしているなんで入ることが出来たのか?
もしくは、チェーンがあっても使わないナニカが入って、隣の部屋で笑っていたのか、、、?


























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