いわくつき物件専門の不動産屋さん【CASE1】
投稿者:ねこじろう (149)
35歳で独身の安河内は大手の不動産会社で営業職をやっていたのだが、度重なる上司の不条理なモラハラやパワハラに耐え切れずとうとう会社を辞めてしまう。
それから彼は大阪の都心部を離れ、周辺部の比較的庶民的なN区に移り住むと僅かな貯えを元手に小さな不動産屋を開業した。
都心部は違うと思うが大衆的な街にひしめく古い体質の不動産屋の中で、新参者が参入することは難しい。
だから彼はありきたりな物件を扱うことを端から諦め、一風変わったものを対象にすることにした。
それはいわゆる「いわくつき物件」というもの。
そもそもなんで安河内はそんな普通の人ならば嫌がる物件を、あえて扱うようにしたのか?
それには彼なりの思惑があった。
どんなに優良なマンションや一軒家であっても、ひとたびそこで生々しい殺人や自殺などがあるとその価値は下落し、一般の不動産屋は扱うことを躊躇するようになるものだ。
ましてや今日日のSNSブームとなると、動画などの心霊サイトでの格好の餌食になってしまうのだ。
ただやはり世の中は広い。
そんな物件であっても、いやむしろそんな物件だからこそ住みたいという物好きな人たちが一定数いるのである。
彼らは総じていわゆる零(0)感体質であり霊的なものに対して全く関心がなく、自殺や殺人が起こったという理由だけで優良物件を格安で住めるのなら喜んで契約するのだ。
これから話す話は、安河内が事務所を開き三カ月めにして遭遇した特に印象深い話だ。
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RinRinさんは年齢性別不詳の関西では有名なマルチアーティストだ。
その扱うジャンルは絵画、彫刻、音楽と幅広い。
彼は生来の自由人であり、その時々の人生で自らの関心のある芸術分野に関してのみ集中して仕事をする。
住むところを決める場合は仕事基準で、その時にやる仕事内容に応じた物件を賃貸して住むようにしていた。
気に入らなければ一週間もせずにあっさり転居を決めてしまう。
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生きている人間が怖い。
おっしゃる通りですね
─ねこじろう