従兄弟のM
投稿者:一成カンパニー (16)
私の実家は、東北でもかなり田舎の方にあり、海と山に囲まれ、自然環境こそ良いものの、昔から続く風習や田舎独特の偏見差別があるような場所です。
幼い頃は、実家は平長屋で少し離れたところに倉庫とお稲荷さんの祠がありました。
倉庫は厳重に保護されており、なぜか子供は入ってはいけないときつく言われていました。
小学校3年になるまでは、夏休み、冬休みを利用して、東京から従兄弟のMとその家族が遊びに来ていました。
一緒に海に行ったり、山で山菜を取りに行ったり、夜はバーベキューや焼肉をしたりして満喫しているようでした。
歳が離れている分可愛がってくれて、楽しみにしていたのを覚えています。
前置きが長くなりましたが、本題はそのMのことについてです。
学校を卒業し、就職したMの会社は、今で言うブラック企業でいじめもあったそうです。
体調を崩し、はじめは胃潰瘍か何かだったと思います。
次第に精神状態が不安定になり、専門の病院に入院したと聞いています。
いつか良くなって、また会えるだろうと思っていましたが、小学校5年生になった頃に、両親や親戚の人から、Mにはもう会えないし、忘れたほうが良いと言われ、理由は教えてくれませんでした。
中学1年になり、中間試験で学校が早く終わり、いつもなら友達と遊んだり、一緒に勉強したりしてたのですが、この日は仲の良い友達が塾や家の用事で都合が悪く、仕方なく1人で家に帰りました。
両親は共働きだったので当然家に居らず、祖父母もこの日は町内の集まりか何かで夕方まで帰らなかったと思います。
私は、何気なく倉庫の方に近づいてみました。
いつも厳重に管理されているのですが、この日は扉が空いていました。
入ってはいけないと言われていましたが、好奇心が勝ってしまい、入ってしまいました。
入ってすぐ階段があり、登ると犬小屋みたいのが4つありました。
そのうちの1つから寝息のような音がして、覗いたところ、人がいました。
Mでした。
元気な頃の姿とは程遠く、酷くやつれ、虚ろな目をしていました。
私をみて驚いていましたが、喜んでいるような気もしました。
大人になってから、あれが座敷牢だと知りました。
この事は誰にも話してません。
高校になる頃、リフォームして倉庫は解体されたので、Mがその後どうなったか知りません。
数年前、両親にMの名前は出さずに、小さい頃毎年遊びに来ていたけど途中から付き合いが途絶えた従兄弟がいたよねみたいな話をしましたが、そういうこともあったなとはぐらかされました
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